大和但馬屋日記

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バーチャルとリアル


「Race Pro」のポルト市街地を走つてゐて、どうもイライラといふかムラムラ来て本分を思ひ出した。「Forza2」のキャリアを進めなければ。
R2プロフェッショナル第三戦ムジェロ。‥‥何だこれ。全然走れない。スタートでホイールスピン、コーナーでは減速しすぎてインカット、出口では踏込みすぎてそのままスピン。酷い。あらゆる操作がラフになつてゐる。リスタートを続けて、勘を取戻すまでに三十分を要した。
決めた。「Forza2」のキャリアが終るまで「Race Pro」には触らないぞ。「Forza2」を進行中であるといふ現状の絶対的な基準がある以上、四日寄道して三十分も煩悶するのは意味がない。ただ四日空けた方が余程マシだ。
で、勘を取戻して楽しく走りながら思つたのは、「Forza2」と「Race Pro」の関係は「電車でGo!」と「トレインシミュレータ」の関係に似てゐる、といふこと。特にPS2用の「電車でGo! Final」は、それまでのPS用(アーケードでもPS互換基板)と違つて、60fpsの滑らかな描画と当時の水準では最高レベルのCGによる景観を実現した決定版だつた。一方の「トレインシミュレータ」シリーズは、実写動画のフレームを直接操作することで強引に運転をシミュレートしてゐた。
当時、それらを同時に遊び較べると、「トレインシミュレータ」の絵と音の情報量に比べて「電車でGo!」はヌルヌルのスカスカに感じたものだつた。実写の場合、フレームレートの少なさまでが電車といふ巨大質量の重量感を表現してゐる様に思はれた。「電車でGo!」の動きは滑らかすぎて「リアル」ぢやない。
今「Forza2」と「Race Pro」に感じたのもまさにそれだ。「Forza2」のあまりに滑らかすぎる動きは、実車を運転してゐるといふ「映像的リアリティ」をスポイルしてさへゐる。勿論、現実ほど滑らかに動くものなどないのだからそれは錯覚にすぎない。それでも、両者を並べれば「Race Pro」の方が「リアル」だと感じてしまふ。
しかし、ぢやあ気持いいのはどちらかといふ話になると、何が言ひたいかは明かだらう?
現実では到底拾へない様なタイヤの微細な動きやアクセルのミリ単位の開閉がダイレクトに伝はる愉しさ。これは考へ方次第ではセナやシューマッハー並でないと持ち得ない超感覚を与へてくれてゐる様なものだ。こちとら凡人だ、実車に乗つてさへそこまでの感覚を持つことはできない。これこそがバーチャルリアリティといふものだ。四速で曲る高速コーナーで、ル・マン仕様のコルベットのテールが流れる。クイッとカウンターを当ててそれを制することが、実際にできる訣もない。それを、インチキでないレベルの挙動でワシ如きにやらせてくれる。最高ぢやないか。
正直、「Race Pro」の後ではエンジン音などは物足りなく思つた。WTCC用バイパーよりル・マンコルベットの音が薄い訣がなからう。でも、そんなのは些細なことだ。
別に「Race Pro」を嫌ひになつたりはしない。ただ、「Forza2」のことを尚一層好きになり、その差が開きこそすれ縮むことはないと思つた、それだけのことだ。