大和但馬屋日記

はてなダイアリーからの移行中

yms-zun2011-03-10

昨日の写真の件についての補足。

相変らず雑な図で申し訣ないが、カメラを固定した状態であるシャッタースピードで写真を撮つた時、そのシャッタースピードの時間内における走行中の車輪の移動量は図に示した通りになる。接地面は地面に対してほぼ止つてゐるのに対し、タイヤの上辺は回転に合せて相当な拒離を進んでゐる。車体そのものの移動距離は、当然車輪の中心点の移動距離に等しい。タイヤの天辺付近が大きく歪む理屈はそれでよい。

しかし、実はそれだけでは説明のつかない部分が昨日の写真にはある。車輪と、そして自動車全体もかなり前のめりに写つてゐるのだ。これはどうしたことか。

優秀なドライビングシミュレータであると同時に、優れたカメラシミュレータでもある「Forza3」のフォトモードで実験してみた。

上が大体、ルノーの写真と同じくらゐのブレ具合を再現した状態。下は分り易い様にシャッタースピードを長めにしてみた。車輪や車体のブレ具合は、前述の理屈通りになつてゐるのが分ると思ふ。しかし、だからといつて車体が前のめりに写つたりはしない。
これは、おそらくカメラのシャッター構造に起因する問題だ。当時のカメラの構造に詳しい訣ではないが、想像するにシャッターは一枚の遮光板がスライドして感光させる仕組なのだらう。写真の下側から先に乾板が露出して、自動車の先進とともに上端まで露出する仕組になつてゐるから、写真の上に行くほど像が前に進んで、全体としては前のめりな絵になつてゐるものと考へられる。
似た様な現象は、コピー機やスキャナのヘッドが移動する間に原稿を動かすことで再現できる。
そして、実は現代のデジカメでも同じ現象は起る。手持ちの携帯電話の内蔵カメラで、高速走行中の電車や自動車を撮つてみるとよい。まず間違ひなく、前のめりならぬ後ろにのけぞつた様な姿で写つてゐる筈だ。デジカメは上からスキャンしてゐるので、画像の下側になるほど被写体が前進してしまふ。高性能なデジカメならば対策はとられてゐるだらうが、廉価なケータイのカメラ程度なら、わりとはつきりそれが写し出される筈だ。お試しあれ。