大和但馬屋日記

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おそ松さん」について思ふところを一ページほど書きかけたけどどうでもよくなつた。書くだけ書いてアップしないといふのはわりと有効。まさにチラ裏である。
そんな事より今から二十七年ほど前に「おそ松くん」といふアニメがあつて、そのオープニングで細川たかしが「うちの父ちやんはサラリーマン♪」と唄つてゐた頃、ゲームセンターに「ウイニングラン」といふゲームがやつて来た。アーケード用ビデオゲームとしては初めての実用的な3Dポリゴンによるドライブゲームといふ位置付けだった。専用の大型筐体と「ハンドルを回すとただ車線変更するだけでなく車自体の向きが変る」といふごく当り前の事実がちやんとゲームで再現されてゐることに随分興奮したものだ。ただその時はまだ自分はF1といふモチーフにさほどの興味がなく、ル・マンのポルシェ962cの方が格好良いと思つてゐたこともあつて、あくまでも「すごいゲームで遊んでゐる」といふ処に留まつてゐた。家で「ファミリーサーキット」で遊んでゐる時もCカーの耐久レースばかりやつてたもんな。その年の日本GPはTVで観た記憶はあるけど、あまり気持ちは入つてゐなかつた。
その後、ふとした心境の変化でF1のプラモデルが作りたくなり、出たばかりのタミヤマールボロカラーのF1マシンを買つてきて雑に作つたのが自分の今に至るF1の始まり。翌年の開幕戦ブラジルGPから、よほどのことがない限り全てのレースを追ひかけてきた。「ウイニングラン」も続編の「鈴鹿GP」がリリースされ、歴史上初めて現実と同じレイアウトのサーキットを現実のドライバーと同じ視点でゲームで走れる様になり、これにはかなりハマッた。テクスチャもないローポリのマシンとコースで、コース周辺のオブジェクトも殆んどないけれど、それは確かにセナやプロストが見たのと同じ風景だつた。ビデオゲームに新たな可能性を感じたのは間違ひなくその時だつた。
何でこんな昔話を始めたかといふと、その理由こそが「おそ松さん」である。ではなくて。

「Forza6」のDLCマクラーレン・ホンダMP4/4が配信された。世間的には勿論、十六戦中十五勝を挙げてセナ・プロ伝説を作つた歴史的名車といふ位置付けで語られ、その文脈でこのDLC収録を歓迎するのだらう。それは解る。自分もその文脈に乗つて「Forza6」を起動して、日産GT-R LMを験した後に「ではそろそろ」とMP4/4を選んで走り始めた訣さ。で、ハンドル握つてアクセル吹かして、セナが鈴鹿でやつた様にいきなりエンストさせちやつて、クラッチペダルと格闘しながら走つてみたら、涙がボロボロ出て弱つたんだ。ああ、これは、あの時ゲーセンで見た「ウイニングラン」そのものだ。あれが実現しようとして時代的に叶はなかつたものが、今まさにここにあるんだ。ここまで遠かったなあ。ゲームはここまで来たんだなあ。
初めての3DCGドライブゲーム、初めて作つたプラモデルのF1マシン、それら自分にとつての「特別なもの」が今形を変へて目の前に帰つてきて、そしてそれを見る自分自身はといふと精々「おそ松くん」が「おそ松さん」になつたのと同じ程度でしかなくて、それはそれで泣けてくるのであつた。やつぱりひどいチラ裏だな。