大和但馬屋日記

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yms-zun2010-11-15

アブダビGP決勝。最終決戦の場がこんなつまんないサーキットで、アロンソとウェバーには災難だつたよね。戦略ミスをドライバーの腕でカバーしやうがないコースなんだもの。もちろん速く走るには腕が要るけど、あのロングストレートの前後のコーナー構成といひ、後半のコピペコーナー群といひ、「バーニーとティルケはきつとレースが嫌ひなんだ」としか思へないよね、とゲームで走つてみて思つたとさ。このヤス・マリーナはティルケの設計したF1サーキットの中でも一番の駄作だと思ふ。セパンとイスタンブルが傑作なのとはまるで反対だ。あのアロンソをもつてしても全く手が出せないんだもの。それあ小林にだつて見せ場はないさ。
何が酷いつて、コースが実質「シケインに狭まれたストレート」と「直角コーナー」しかないから。コーナー曲るのに使ふギアが一速から三速までで、ラインを開発する余地はまるで無し。アルバートパークジル・ヴィルヌーヴだつてもう少しマシ、オンガロリンクなんてどんな神サーキットだよ、と思ふ。セパンは裏ストレート手前のサンウェイラグーンとホームストレートエンドの一、二コーナーが絶妙で、数年前に他ならぬアロンソが素晴しいオーバーテイクを見せてくれた。将来ヤス・マリーナが攻略され尽してもああいふシーンは出てこないと思ふ。昨年小林がバトン相手にやつてみせたのは、まさに初年度だからこそなんぢやないかな。
とまあ、コースにばかり文句を言つてるけど、とにかく速く走つて他を寄せつけなかつたベッテルは立派。韓国での不運を考へれば、むしろ決つて当然の結果だつたらう。逆にアロンソはあのボーナスとドイツでのプレゼントがなければ、今日の土俵に上れてなかつたのだから。

マイケルのこと。自分にとつてのマイケルはやはり四年前に目の前で上げた白煙で終つてゐるのだつた。今日の事故で怪我がなくて本当によかつた。もうやめてくれ、とは思はないけれども別に続けてほしくもない。今年の彼からは何も魅かれるものがない、ただ視界に映つてゐるだけだ。俺はマイケルを見て怒つたり呆れたり、そして見事すぎる走りでガッツポーズをしたかつたんだ。十五年と少しの間、それを堪能させてもらつた。もう十分だ。

ていふか、「皇帝」つて何なのだらう。俺は彼のことをさういふ風に思つたことは一度もないな。俺の目に映る彼はただ誰よりも運転が巧くて、少しばかり「負けず嫌ひ」の度が強かつただけだ。ドライバーとしての能力以外の部分では何やらせても大抵駄目だつたのだし。喋りの上手さや同情の引き方、政治的立回りなんかでは彼より達者な奴が幾らでもゐた訣で、だからこそ彼は「悪役」視されたのだと思ふ。空気読まない奴はいつだつて悪なのだ。

もちろんマイケルの活躍の陰には常に可哀相な第二ドライバーといふ存在があるのだけれど、それはチームの方針といふ奴で、チームにそこまでさせる力つてどれほどのものかと思ふのさ。そこらの巧い奴に同じことやらせたつて、結果としてついてこないんだもの。

さういふ体勢を作つたフェラーリが「帝国」なら、その皇帝はルカに決つてるぢやないか。マイケルだつてルカの手駒にすぎないのだから。マイケル=フェラーリ=帝国といふイメージからはまるで、老エンツォ時代がユートピアだつた様にみえるよ!! 知らんけど。

さうだな、来年のメルセデスGPがマイケル一色のチームになつて、それでマイケルがかつての強さをまた発揮できたなら、その時初めて「皇帝」と呼ばう。俺は、もうそんなことはできないと思つてゐる。全盛期の終りにアロンソに負け続けた男が、今誰に勝てるつて?