大和但馬屋日記

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正確かどうかはさして問題ではなく

「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」--Nature誌が調査結果を公表 - CNET Japan

ううむ。統計上はさうなのかも知れないが、それはたぶんブリタニカにも載つてゐるくらゐ一般的な項目に限った話だらうし、「但し英語版に限る」なんだらうなとサブカル系記事を見るにつけ思ふ。Wikipediaの特質は正確性の有無よりむしろ可塑性により正確にも不正確にもなり得るといふ點にあるのだらう。

例へばサブカル系記事の中でも割と一般的に近さうな「スペースインべーダー」の中のこんな記述。


国民的人気となったため、軍資金となる100円玉が市中から枯渇し、日本銀行が急遽、普段の月の三倍にあたる66億円分の100円玉を市中に流した。

硬貨の發行は日本銀行ではなく政府、當時なら大藏省が行ふことである。この記述について、ある時期の版を覗いてみれば何度も手を加へられた痕跡が見られる。
現行硬貨(1円玉〜500円玉)の年別発行枚数一覧【〜平成30年】 - fragment.database.の1978年の前後の百圓硬貨の發行枚數を見て、「インベーダーの御蔭で市場の硬貨の量が左右された」と見てとることは可能だらうか。1978年の翌年、さらに次の年と飛躍的に伸びてゐるのは確かだが、過去七年の上下幅と較べれば特筆すべきことなど無い樣にも見える。「量を絞つた年にインベーダーブームが起きてしまつたので翌年に前年の水準に戻した」くらゐは言へさうだが、果してさうか。そもそも年毎に額面で數十億圓單位で發行枚數が上下してゐるのに、納入された日本銀行が市場に流す段階で「普段の月の量」などと言へる程に流通量が一定してゐるとも思へない以上、その三倍の六十六億圓分といふ數字も隨分怪しく思はれる。一應出典のある記載ではあつても、その出典の書物の妥當性までは問題にされてゐない。

今自分がちよつと調べてグルグル考へたのとほぼそつくり同じ經過が編集履歴に殘つてゐて、現時點で落着いてゐるらしいのが先に引用した記述なのだが、自分はこれの妥當性を疑はざるを得ない。今後記述がどうなるかも判らない。Wikipediaとは永遠にさういふものなのだ。