大和但馬屋日記

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データなし

一日ル・マン観てた。
まあそれあ、誰だつて流石に今年はトヨタが獲つたよね、おめでたうといふ気分でゐただらうさ。三十秒差で二位を走るポルシェが勝利を諦めて残り七分程でピットに入り、タイムアタックの準備をしたくらゐだもの。今年の栄冠はトヨタのものだと、ライバルですら思つてた。国際映像がGTEクラス首位のフォードGTからユノディエールを走るトヨタTS050に切換つたその瞬間までは。

ユノディエールを走つてゐるにしては遅くないか? Forzaシケインの進入速度ぢやないだらう、これは。いや気のせゐか、さもなくば残り二周なのでわざとペースダウンしたか? そこまで考へたところでForzaシケインを通過する中嶋一貴から悲痛な声が。「No power! No power! I have no power!!」…終つた。全世界が驚愕しただらう、落胆しただらう、ポルシェだつてどんな顔をしていいか分らない様子だもの。
理想のレーシングカーとはチェッカーフラッグを受けた直後に壊れる様に作るものだとよく言はれる。エンジンもギアもブレーキもタイヤも、ゴールの瞬間までは最大限の性能を発揮して、ゴールと共に寿命を迎へる様にギリギリまで無駄を削るものだと。TS050はさういふものを目指して、しかし七分早くその寿命を迎へてしまつた。二十三時間五十三分で毀れてしまふ、さういふ車をトヨタは作つてしまつた。ただそれだけ。それ以上でも以下でもない。敢へて他に敗因を求めるなら、もう一輌の六号車が夜中にGTアマチュアクラスの車と接触事故を起してゐなければ、そして午前中にコースアウトしてゐなければ、勝つたのはこちらだつただらう。どちらも小林可夢偉の仕業だつたといふことは、ル・マンドライバーとしての小林は未熟だったと言はざるを得ない。耐久レースでやつてはいけないことだから。優勝を逃した五号車については、ずつとポルシェに追はれてゐたのがプレッシャーだつたのだらう。せめて一周でも差がついてゐれば、あの悪夢の七分は来なかったかもしれない。
してみればやはり耐久レースの勝ち方を知つてゐるポルシェと未だ勝ちを知らぬトヨタの地力の差が出てしまつたのだと思つた。トヨタは本当にお気の毒様。さしものアンチ気味の自分ですらちよつと涙ぐんでしまつた。また来年頑張らう。
頭がグルグルした状態でそのままF1ヨーロッパGP。いやあ、ル・マンの後だとテンポが早いね。高速サーキットでもあつたのであつといふ間にレースが終つた。下馬評を覆す様に大きなアクシデントも起らず、燃費を気にしてかあまり無茶な走りもできず、普通にロスベルクが勝つてしまつた。
一番の見せ場はハミルトンとライコネンがそれぞれピットと喧嘩してゐたところ。二人ともマシンにシステム的なトラブルを抱へてゐて、ステアリング上のスイッチ操作で正しいモードに入れることができず、「どうすればいいんだ」とピットに訊いてゐる。しかし昨年中盤から制定された無線によるドライバーへのテクニカルなアドバイスを行つてはならないといふルールの為にピットは「それは言へない」としか答へられない。「イエスかノーかくらゐ教へてくれたっていいだらう!?」「ダメなんだ」。コントか。
事故を望んだ訣ぢやないし面白かつたけどもうー味欲しいレースだつたかな。