大和但馬屋日記

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ARIA The NATURAL #13

アリスが主人公の回。映像作品としてみて、ほぼパーフェクトに近い出来だと思つた。素晴しい。第八話は「教科書通りのアニメ演出」として完成度の高い回だつたけれど、今回はそれとも方向の異る、どちらかといふと映画志向の演出だつた様に思ふ。
アバンタイトルから、いつもと少し違ふといふ予感はあつた。背景と影のコントラストが若干高めで、「ARIA」らしくない。夏の暑さの強調表現としてさうするのは分るけれども、始まつてみれば「影」そのものが話の中心になつてゐた。なるほど。
背景ありきで進む話だつたから当然背景描写にも力が入つてゐたし、レイアウトやカット繋ぎも見事。「ARIA」ならではの要素もうまく咀嚼して取入れてゐて、観るのが楽しくて仕方のない回になつた。
最初に「ほう」と唸つたのはオープニングバックの展開。日向で遊ぶ街の子供たちの描写が積み重ねられていく。そこでもきちんとコントラストの高い影が地面に落ちている。その一連のシーケンスの締めとして、橋の上で猫を追ひかける子供達。猫が店のテントの上に飛上がり、そのまま画面右に逃げてフレームアウトする。子供達がそれを目で追ふ。絶妙のタイミングでアリスの漕ぐゴンドラがその方向からフレームイン。「子供から猫へ、猫からアリスへ」といふ視線の誘導が、そのまま今回のテーマであるアリスのどうしやうもない子供くささを象徴してゐて見事だつた。
今回の話は、たぶん台詞を全部なくしてBGMとSEとアテナの歌ふ舟歌だけにしても十分観るに耐える出来なのではないだらうか。背景が綺麗とか作画が良い悪いとかではなく、映像がきちんと「語つてゐる」。PIXARの作るショートコントを「カーズ」の試写会で観たから言ふ訣ではないけれど、方向性としてさういふものを目指して成功した回だつたと思ふ。正直、まさか「ARIA」でこれほどのものを拝めるとは思はなかつたよ。アニメスタッフには全く詳しくないのだけれど、今回ばかりはメモ。