で、「バンブラPしもべツール」だ。
「前作『バンブラDX』用の曲データは今任天堂の中の人が必死で手打ちコンバート(…)してるからお前ら下僕共はこのツールを使つて発売日までにアップロードできるデータを作り溜めておけ」と、意図的な曲解でなく本当にさういふ趣旨で無料配布されたのがこの「しもべツール」。十一月に発売になる「バンブラP」の、作曲機能部分だけがフルに使へる音楽エディタだ。
「バンブラ」プレイヤーの内、音ゲーに興味がなく作曲ツールとして購入する層はかなりの割合を占める筈だが、いいのかこんなものを配布してなどと若干の心配と共にダウンロードして起動して納得。このツールは「バンブラP」発表日に起動しなくなる。起動時にネット認証によるアクティベーションを毎回行ふのでどうあつても発売日以降に使ひ続けることはできない。なるほどね。
機能の方だが、「バンブラP」の「P」はボカロPの「P」。つまりかういふことができる。
五年前に「バンブラDX」に入力した「ギターフリークスV」の「妄想学園ino-koi組」を、手入力でコンバートしてからボーカルを追加してみた。作業時間は一ジェバンニ。
ボーカロイドを触るの自体が初めてなので調声*1は酷いものだが、時間をかけて一声ごとに手を入れれば良くはなるだらう。勿論本家ツールで本気で調声したのと同様にはならないだらうが、それでも基本的な機能は概ね揃つてゐる様だから、入門用としては十分だと思ふ。何より、本家の方ではこんな風に伴奏と一緒くたにして一つの完結したデータが作れる訣ではない。キャラクターボーカルシリーズは、ボーカル以外のトラックを別途用意して、自分でミキシングまで行はないと曲として完成しない、正しくDTMの楽器だ。
さういふ意味で、「バンブラP」によるボーカロイドへの参入障壁の引下げはちょっとした歴史の転換点となるのかもしれない。しかもそれが期限付きとはいへ無料配布。ソフトを買つても数千円だ。
まあ、このボーカロイドは「ミク」ではないし、何か特定のキャラではない。その代り、音素材として自分の声を使へる。藤田咲氏の声をサンプルといて録ればそれがミクと呼ベるものになるかどうかは、きつともう誰かが試してゐるのだらう。いやはや、凄い世の中になつたもんだね。
ボーカロイド以外の部分でも、ツールとしてかなり強化されてゐる。楽器の音も良くなり、エフェクタやフィルタによる表情付けも豊かになつた。コード周りでは転回形も作れるし、発声数も増えた。
大元はあくまで音ゲーのプレイ用譜面を自作するための補助ツールだったけれども、最早そんなレベルではない。音ゲーとして「やり込む」要素は「DX」の時点で二の次となつたことだし、そちらの楽しみは「project mirai 2」が補つてくれるから良いとして、ボーカロイド遊びは「バンブラP」で、って何か妙にねじれてゐる気がしないでもないが、カードスロットの呪ひから解放された二〇十三年の今、両者は排他的な関係ではないのだ。「KORG M01D」もあるしね。
あとは3DS LLのスピーカーさへもう少しまともなら、何も文句はないのだけど。
といふか、「発売時のコンテンツを増しておく様に」といふ趣旨で配布されたツールで、非JASRAC管理曲のデータを作る俺マジ役立たず。