大和但馬屋日記

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SFとは何ぞ

SFに関する見解の相異。どちらが正しいと言ふわけでもないし、どちらかに味方したいわけではないけれど、「ああ、かういふ論争はオレもやつたよなあ」と思つたので少し口を挟んでみる。
今現在の個人的な立場を率直に言ふならばadramineさんの考へに近い。読書好きを標榜するほど熱心なSF読みではないしSFコミュニティに近くもないので

  1. わたしが「これはSFだ」と判断した著作物
  2. あなたが「これはSFだ」と判断した著作物
  3. だれかが「これはSFだ」と判断した著作物

といふ名(迷?)文句のことは知らなかつたけれど、自分もこれとほぼ同じことを考へてゐる。大和但馬屋のトップページからリンクしてゐる「SFサイトへ100の質問の回答」にまさしくこんなことを書いたことがある。

ちなみに,オレが思うSFって何かというと,結局売る側の都合による分類にすぎないんじゃないかと。出版社がSFと言って売るからSF。それだけの話。そればっかりじゃ乱暴なんで,もうひとつ条件を付け加えると,「オレがSFと思ったものがSF」。結局そういうもんだと思うのよ。で,読者の数だけその「オレ基準」があるとして,そうなるともう「SFとはどうあるべきか」みたいな議論を始めても仕方がないっつーか。

そもそもSFサイトなぞではないだけにおこがましいが、これを書きたくて無理矢理質問に答へたやうなものだ。
文学に限らず、あらゆる娯楽分野のジャンル分けについて、オレは売る側の都合にすぎないと思つてゐる。SFらしい作品はSFと銘打つておかなくては書店でSFの棚に置いてもらへない。それだけならまだしも、どこの棚にも置かれない可能性がある。だからSFは自らをSFと称する。公的にはそれだけが唯一絶対の理由。
昔Oh!X誌でこんな話を読んだ。かつて冨田勲クラシック音楽シンセサイザーでアレンジした時に、レコード会社から「これはお店のクラシックの棚にも現代音楽の棚にも置けないから売れない」との理由でアルバム化を断られ、仕方なくアメリカへ持つて行つたら大変な話題を呼び、日本のレコード会社は慌ててこれを逆輸入した、なんてことがあつたさうだ。以上、閑話休題
もちろん、だからジャンル分けなど全く無意味だと切つて捨てるわけにはいかず、消費者としてやはりジャンルに頼つた作品選びを普段から行つてゐるわけだから、それを全否定するつもりはない。ただ、作家が「SFはSFらしく」と唱へたり、読者がそれを求めたりするのにはやはり首を傾げてしまふ。
実のところ、昔は自分もDocSeriさんと(ひいては野尻抱介氏と)ほとんど同じことを考へてゐたし、他人にもそのような主張をしてゐた。しかし、よくよく思ひ返してみれば、読んで面白かつたとか心に残つたSF作品はどれもよくしたもので、プロットは独創的だし物語としての構成も破綻がないしガジェットも魅力的だし、登場人物(人に限らないが)もよく描かれてゐる。当然のことだ。作品や作家によつてどれかが突出することはあつても、どれかが欠けてゐては作品として面白くない。で、自分が読みたいのは何かといふと、面白い作品、それだけだ。SF的プロットやガジェットが好きだから「普通の文学」ではなくてSFを選ぶことがほとんどだとしても。
ゲームに例へれば、「塊魂」はSFだ。誰がどう言はうと、あれは絶対にSFだ。所謂「SF的考証」をすれば何一つ理に適つてはゐないけれども、しかしあれは疑ひ様もなくSFだ。もちろんSFかどうかに関りなく「塊魂」は面白いのであつて、その中心には優れたゲームシステムがあるのだけれども、やはりあの王様と王子と星野一家が居なくては駄目だと思はされるくらゐキャラクターにも力があつて、その他の音楽や諸々の演出がくつついて転がつて固まつて出来た「塊魂」といふ作品が愛しくてたまらなくて、でもやつぱりこれはSFだよなあと遊びこむほどにしみじみ思へてきて、SFつてさういふものなんぢやないのかな、と。要するに「塊魂」がアクションゲームなのかパズルゲームなのかといふことを考へるよりも、それが「面白いゲーム」であることの方が遥かに大切なのであり、創る側も遊ぶ側もそれを目指したり求めたりする以外にできることはないんぢやないかな、と思ふのだ。
もちろん作家や作品によつて、プロットでもの凄いハッタリをかますけれども人間描写はステロタイプだとか、設定は緻密だけれど考証はメチャクチャだとか、人物は魅力的だけど話のオチがグダグダだとかいろいろあるけれども、さういふのは「SFとしてどうか」以前の問題ぢやないのかな。あるSF作家が「SFはSFらしくあるべきだ」といくら主張したつて、そして出てきた作品がどれだけSFの要件を満たしてゐたところで、それがつまらなければどうしようもない。そもそも作品が世に出てこなければ尚更どうしようもないのであり、まあ野尻氏がさういふ作家なのかどうかはよく知らないけれど、といふかこれは完全に蛇足だけど、オレにとつては野尻氏は「宇宙科学方面とギャラクシーエンジェル方面の凄い人」ではあつても作家とは認識してゐないかも。オレが見聞きした氏の作品て、もしかしたらGAのロマンアルバムに載つたショートストーリーと、氏が脚本を担当したGAの数話だけぢやないかな。てへ☆(桜葉さん風に)
話の投げ方もGA風。


序でに、全然関係ないけど王子が「G」マークを絶賛転がし中