大和但馬屋日記

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正しい統計が嘘をつく


このツイートで引用された圖を見れば、誰だつて一瞬は「若者の自殺率が高すぎる! とんでもないことだ!」と思ふだらう。しかしその一瞬を過ぎれば、この圖が何を示してゐるかを讀取れる筈だし、讀取れなければならない。

二十代までの若者は、まづさう簡單に死なない。ある統計を見れば、六十代の男性は二十代男性に較べて死亡率は十五倍にもなると判る。三十代と四十代の・間で死亡率は二倍近くに跳上がり、年代が上るごとに一方的に率は上り續け、最後は皆死ぬ。當り前だ。若者は一万人居ても四人しか死なないが、年寄りは一万人居たら百人から二百人は死ぬのである。ではその一万人の若者のうち四人は何故死んだか。その時分に死ぬ理由なんて事故でなければ自殺だらう、といふだけの話だ。四人のうちの二人が自殺なら死因の半分は自殺で、年寄り二百人のうち二十人が自殺でも死因の割合としては一割でしかない。そして勿論、統計上の自殺者の絶對數も年齡が上るほど多くなるのである。


要するに元の圖が示してゐるのは「若者は自殺でもしない限りさう滅多なことで死ぬことはない」といふ事實にすぎなくて、統計上の「黒くてエグい谷」など元から存在しないのだ。勿論それは統計的な人數の話であつて、若者が自殺をすることに問題ないといふ訣ではないが、それは個別に對處するしかない問題だ。

をかしな圖を作つてありもしない問題を拵へて騒ぐのは社會にとつて害惡でしかない。