大和但馬屋日記

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流石マイクロソフト(良くも惡くも)

マイクロソフトの新しい擴張型ゲームコントローラーの提案。一見した感じではまた新規デバイス商法か、凝りてないなと冷笑的に見てしまつたが、どうもさういふ狙ひとは異なるものらしい。

この動畫を見て不意に涙が出さうになつた。俺はゲームが好きだ。しかしある日何かのきつかけで四肢や十指が思ふ樣に動かせなくなるかもしれない。日々を生きて、ある瞬間にさうしたことに思ひが到つたことは何度だつてある。もしさうなつた時に、世の中が諦めなくていいと言つてくれてゐる、そんな風に思つた。

先日の名古屋城の改築の議論でも、障碍者の為にどこまで配慮しなきやならんのか、諦めるべきところは諦めろといふ意見を厭といふほど目にした。しかし、建て換へようとしてゐるのは今までエレべーターのあつた公共施設である。それが耐震基準を満たさなくなつたから取毀して新たに建て直すことにした。折角だから現存する圖面を元に當初の城閣を再現することにした。勿論エレべーターなどを設ける餘地はない。かういふ理窟で、今まで名古屋城に上れた人の内の少なくない割合の人に今後は上るのを諦めろと、さういふ方針にした訣だ。情けない話ではないか。

つい先日、不慮の事故で半身不随になつたアイドルの話を聞いた。本人には何の落度もないのに、強風で落ちてきた看板の下敷きとなり、突然足で歩く自由を永遠に奪はれたのだといふ。假に自分が同じ立場になつたとして、現實的に多くのことを諦めなくてはならなくなることは勿論わかる。しかし、だからこそ、こんな風に「諦めなくていいこと」が示されるのはそれだけで有難いことだと思ふ。細いレールの上をどんな理由でも踏外したらお終ひだなんて思ひたくはないだらう、誰だつて。

ほんの少し前に「マイクロソフトがゲームコンソールから撤退する四つの理由」なんて飛ばし記事が日經新聞に載ったらしいが、まあそんな風に業績を數字でしか見ない馬鹿とは見てゐる高みが違つた樣だ。そして勿論、日本マイクロソフトのサイトにはこのコントローラーに關する情報など一バイトも載つてゐない。日本法人にこんな高邁な事業に關れる力がある訣もない、端から期待などしてゐない。

障碍者へのサポートは各個人へのカスタマイズが必須だから、ピンジャックで繋がるモジュールを組合せて使へる樣にして、多樣なスイッチやセンサーを用意したのだらう。これはDIY的に遊ぶにも適してゐるし、ARやMRのデバイスとしても有效に使へさうだ。Hololensとの連携は當然視野に入つてゐるだらう。地味だし大きなマーケットにはならないだらうが、世の中にかういふものが必要だといふ提案をする人がゐることを、本當に嬉しく思ふ。