検索数が落ち着いたと思つたら検索さんいらつしやい(十月三十一日) - 大和但馬屋日記の記事がニュース系サイトに貼られてアクセス数は膨れ上つた。それはいいんだが。
そもそも「ドルアーガの塔」のマップがどういふ特徴をもつてゐるかを把握せずにあれを読んでもあまり意味がない気はするよ。
「ドルアーガの塔」のマップの特徴は、次の通り。
- 迷路の構造は全てのフロアにおいて完全固定である
- 遠藤氏の「乱数を元にした自動生成である」といふのを「不思議のダンジョン」の様なランダムマップの作り方と誤解しないこと。ドルアーガの塔 攻略などを参照すれば分ることだが、「ドルアーガの塔」の各フロアの迷路の形は常に一定である。
- クリアに必要な鍵と扉、モンスターの配置はランダムである
- 最初のフロアに関していへばギルの出現位置もランダム。次のフロアからは、前のフロアの扉の位置がギルのスタート位置となる。また、鍵と扉の位置決定に関しては完全なランダムではなく、フロアの右上隅か左下隅のどちらかを起点とした角道の上に必ず配置される。
この二つの相乗効果により、各フロアの構造が熟練したプレイヤーの脳裏に強烈に焼きつくことになる。いくつか例を挙げてみよう。
- FLOOR 1
- フロア中央を斜めに走る階段状の壁により、全体が大まかに三分割されてゐる。このため、初期配置によつては大変な廻り道を強ひられることになる。また、一度しか使へないマトックが近道を作る役に立たない局面も生れ易い。「全面を通じて一番難しいフロア」といふ印象があるのもこの構造故である。
- FLOOR 2
- フロア中央を縦に走る壁が特徴。ここをマトックで巧く破れば、ジェットブーツの回収は比較的簡単に行へる。ジェットブーツの効果も相俟つて、前のフロアとは違ふ印象が残る。
- FLOOR 5
- 上辺と下辺に長い通路がある。スタート地点がこの辺りだと、馴れない内はメイジの呪文の餌食となり易い。
- FLOOR 10
- 赤スライムの呪文を受けるために、スライムが上辺の長い通路上に現れることを祈らざるを得ない。馴れれば他にもいくつか呪文を受け易いポイントが見えてくる。さうするとこのフロアが難しいといふ印象はなくなる。
- FLOOR 15
- 上辺の殆どをカバーする長い通路。ここを歩く時、もしも表示範囲外にクオックスが居たらと思ふといつもドキドキする。画面外から炎が伸びて来た日には。
- FLOOR 16
- 馴れたプレイヤーなら、宝を出す条件を満たす最短ルートやメイジの存在を全く気にせずミラーナイトを倒せる場所を把握してゐる筈。
等等。特に前半に印象の強い面が多いのは、前半の方が後半面よりもプレイ機会が多いことと、後半は装備によるパワーアップによつてマップ上の障碍が殆ど無力化される為だらう。前半はある意味マップ自体が敵である。
上に挙げたやうに、プレイ回数を重ねたプレイヤーほど、そのプレイ経験を基にマップ構造に特別な意味を勝手に見出してしまふ。そのマップが、実は擬似乱数によつて自動生成されたものに過ぎないといふのが件の話の面白いところである。そして、遠藤雅伸氏自身、さうしてできたマップの形自体には「何の興味もない」と発言してゐるところが、また何ともいへず面白いのだ。ゲームデザインとはなんぞや。
以上、分つてる人には「何を今更」な話だけれど、野暮を承知で解説してみた。