大和但馬屋日記

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サイクリングに出掛けた。特に行先は決めてゐなかつたが、豊田安城自轉車道でも走破してみようと、とりあへず豊田市に向けて走り始めた。この時はまだどこが起點かすら把握してゐない。
途中で通過した名鐵の淨水驛周邊の様子に舌を巻いた。街自体が最近整つてきたばかりの新興住宅地であるらしく、驛の近隣にある商業施設の悉くがその住人の、恐らく三十臺を核とした主婦層だけを向いてゐる。特に顕著なのはヘアサロンの多さで、自轉車で流した道沿ひに建つ獨立した店舗の十軒に五軒はヘアサロンといふ有様だつた。どう考へても多すぎるが、今はそれだけの需要があつて營業が成立つのだらう。しかし住宅地の施設としては剩りに特定層にだけ偏りすぎて見える。十年後、二十年後のこの街はどんな姿になつてゐるだらうか。定點觀測の題材としてはそれなりに面白さうではある。
さらに走つて見かけた食堂で晝食をいただきながら調べてみれば、その食堂からさほど遠くない場所が自轉車道の起點であるらしかつたのでそこへ向ふ。

概要は看板にある通り。矢作川から取水した枝下用水と明治用水のルートに沿つて自轉車道が整備されてゐる。明治用水沿ひの方は歴とした縣道である。縣道でもなければ二市に跨つて整備されたりしないわな、といふ話でもあるか。
起點の河原から少し遡ると枝下緑道に入る。枝下用水の傍の細い道ながら平坦で走り易い。この平坦といふのが少々不思議で、基本的に用水を右に見ながら走る訣だが、そのさらに右隣は丘陵の山腹で、道の左側は平地を見下す様になつてゐる。つまり大きな丘陵地の外縁の少し高いところをほぼ水平に走る疏水になつてゐて、つまりこの緑道の形がそのまま丘陵地の等高線を描き出してゐるイメージなのだ。この疏水が眼下の土地の生活を支へてゐると思ふと面白い。
しばらく進むと山合ひのダム湖の様な處に突當る。ここが矢作川明治用水取水地で、川幅の擴がる先に大きな堰があつた。遠くに高速道路の斜張橋も見えて中々の絶景だ。

ここからは名高い明治用水沿ひに走る。豊田市内は民家の軒先の生活道路としての色の方が強くてあまりスピードも出せないが、ポタリングとしては快適に走れる。所々途切れて繋がり先が判らなくなるのが難點。Google Mapにルートを登録してくれた先人の御蔭で迷はずに濟んでゐる次第。
安城市内に入ると如何にも整備されたサイクリングロードの鹽梅になり、交叉する道路に對しても横断歩道ではなくトンネルでアンダーパスする様に造られてゐる。金掛かつてるなあ。
この邉は安城コロナワールドに行く序でに轉がすことも多いので走り馴れた道だ。今日も映畫を觀る用はないがー旦道を外れてコロナワールド隣のオレンジペコで休憩した。

茶柱は立たなかつたわ。
自轉車道に戻つて終點を目指す。日が暮れてきて、椋鳥の群れが空を覆つてゐるところに出喰はした。

一本の電線に留つてゐる数から全體を推察するに、一万羽くらゐはゐさうだと思つた。
女三人寄れば姦しいといふが鳥が一万羽も寄れば鳥といふ字を縦横百づつ竝ベなくてはならず、とても書けたものではないし實際かしましいどころではない。やかましい、だ。何かの彈みで全體が飛び立つて動くと、空一面が歪んで動く様にすら見える。あたかも空間に假想の格子を描いて、3Dのツールで變形をかけたが如くである。壯觀であつた。

終點。起點に比ベると随分御坐成りな看板で、そもそも何故「ここが」終點なのかも理解しかねる中途半端な場所だつた。ともあれ完走はしたが、PIXPRO SP360の録畫は失敗してゐてガッカリした処で終了。ここから更に三十キロ超の道程を歸つた。

起點から終點までのログ。