大和但馬屋日記

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74.6kg

ローラーで三十分。体重がここらで安定しつつあるのがもどかしい。筋肉の分だと思ふことにしよう。

秋葉原といふと、いまは家庭電気製品特売所の代名詞になつてゐるが、戦前は都市交通の末来図のやうな駅として、子供向けの乗物図鑑などに色刷りの絵が載つてゐた。当時東京に一本しかなかつた地下鉄が最下段、その上に市電、二階が京浜東北線、三階が総武本線となつてをり、四層にもなつたところは日本中にここしかなかつた。秋葉原駅の上空にはかならず飛行機が描いてあり、立体感を強調してあつた。さういふ絵に刺戟されて秋葉原駅へ出かけ、総武本線の電車で御茶ノ水まで乗ると、高所のスリルを覚えたものだつた。

電子書籍版の「最長片道切符の旅」を三十年振りくらゐに読んでゐる。中学高校の時分の地方民では読みとれなかつた実感や体験、三十年分の自分の中の拙い積重ねが、昔読んだ本の面白さを何十倍にも引出してくれる。国鉄華やかりし頃、後の白糠線の廃止に端を発する鉄道路線の総延長の衰退を見る直前の記録として貴重な本でもあるけれども、何より筆者の主観が面白い。これが書かれてから数十年、日本の風土は変つた。そして、日本の風土は変つてゐない。矛盾ではなく、実感としてさう思ふ。秋葉原の街並みは俺が住んだ十七年の間に幾度も様変りしたけれども、御茶ノ水に到る高架橋のスリルや神田川沿ひの崖にへばり付く建物の姿は何も変らない。