大和但馬屋日記

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Wii U スティック乘取り改造記

yms-zun2013-09-08

半田鏝と戯れる一日。WiiクラシックコントローラーPROをWiiU用鉄拳スティックで乗取るといふ些か不毛な作業を行つた。

WiiUまたはWiiでアーケード型ジョイスティックを使用するには、Wiiリモコンジョイスティックを接続する形をとることになる。WiiUの鉄拳スティックをその様にして使ふと、重大な入力遅延が発生するのは以前に触れた通り。クラコンPROならここまで酷くはない。といふことは、WiiUスティックの内部のロジック回路が遅延の発生源となつてゐるに違ひないから、WiiクラコンPROのキー入力部分を乗取つてWiiUスティックに繋げれば、WiiUスティックのメカの美味しい部分だけを使へる筈だ、と思つた次第。他機種や自作のスティックで乗取るのならまだしも、普通に接続できる機種同士で乗取り工作を行ふなんて聞いたことないわ。それといふのもHORIの仕事がいい加減である所為だ。そんな訣で、クラコンPROの基板のパターンを追つて、どこに何を繋げばいいかの目途を立ててから一気に工作した。

Xbox360のコントローラなら、乗取りに便利な半田付けスポットが基板上に用意されてゐたから作業は楽だつたものの、WiiクラコンPROの基板にはさういふものがなく、半田付けするにはパターンの被覆を削つて直に半田付けしなくてはならない。こいつは厄介だ。被覆を削る時にパターンを破損したり、半田付けした後にケーブルを引張つてパ夕ーンを剥がしたりしてしまふことがあるからだ。乗取り後もクラコンはそのまま機能させたいので、その手の事故は避けたい。

鉄拳スティックとクラコンPROを繋ぐケーブルには、絶滅寸前のプリンタ用シリアルケーブルを選んだ。上・下・左・右・A・B・X・Y・L・R・ZL・ZRの十二のスイッチと、全てに共通のGNDの十三本のケーブルが少なくとも必要なので、本当なら十五ピンのアナログディスプレイケーブルあたりが最適なのだが、生憎手許にはない…こともないが、貴重なそれを潰す訣にはいかない。三十六ピンのプリンタケーブルなら今でも辛うじて店頭で購入可能なので、それにした。USBとHDMIとLANケーブル以外は手に入り難いこんな世の中ぢや。

作業には、かなり苦労した。やはり何箇所かでパターンを破損してしまひ、クラコン単体では機能しなくなつてしまつた。まあ、アナログスティックとL・Rボタンは生きてゐるので「アサルト」と「リブルラブル」は遊べるから良しとする。

何より苦労したのは、クラコン内に乗取り線を収めたまま元通りに蓋をすることだ。コントローラーの作りがタイトで、内側の余裕が殆どない。やはり36ピンのケーブルを仕込むのは太すぎた。何とか収まつたから良かつたものの、予想外に時間を掛けてしまつた。

そんなこんなで散々苦労して、WiiUに接続してテストしてみたら、レバーの左右を逆に繋いでしまつてゐて卒倒しさうになつた。アホか。半泣きで繫ぎ直す過程でさらにパターンを傷めてしまひ、自棄になつてクラコン毎捨てるしかないかと思つたが何とか踏み留まつて、薄氷を踏む様な半田付けを辛うじて成功させて、再びクラコンの組立て直しに四苦八苦して、やつと完成。

前と同じ「スターフォース」で検証してみたら、うん、何とか我慢できる程度には遅延を改善できたかな。体感的に、改造前の半分程度といふところか。吊るしの状熊だとラリオスで五万点ボーナスが絶対に取れなかつたのが、改造して取れる様になつたのだから大成功と言つて良からう。勿論アーケード版やX68000版の様なダイレクトな操作感からは程遠いが、まあ今の時代の遺産として辛うじて許せるレベルにはなつた。

しかしまあ、ゲーム機の能カは昔と比べて飛躍的に向上したけど、入出カの遅延についてはどんどん悲惨になるー方だな。液晶の表示遅延、映像信号の伝達遅延、音声のエンコード/デコード遅延、コントローラの通信遅延。どれもこれも、サターンまでの時代にはなかつたものばかりだ*1。全てがデジタル化されて、表現力は高まつたかもしれないが、何をするにもモタつく様になつてしまつた。気にしすぎ、なんてことがあるだらうか。昔できてゐたことが今できないといふのは、技術の進歩とは言へないと思ふのだがね。

*1:PSには初代からハードウェアの構造的に不可避なコントローラの遅延が存在するらしい