大和但馬屋日記

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田口仙年堂は絵描きに愛される作家だなと思つた

コッペとBB団 その2(田口仙年堂,ファミ通文庫) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

コッペとBB団 その2 (ファミ通文庫)

コッペとBB団 その2 (ファミ通文庫)

ああ、もう上手いなあ。薔薇の騎士のキャラづくりなんて今更ピクシィミサですか手垢つきまくりだろと最初は思つてたのが、さういふ風に持つていくのかと感心させられた。上手いなあ。
どちらが善でどちらが悪かといふテーマ自体もさう珍しいものではないけれど、その作品世界で「正義のヒーロー」と「悪の組織」が最初になぜその様に定義づけられて広く認知されるに至つたかが気になるといへば気になる。一巻目で説明されてたかな? よく覚えてないので後で読み返さう。たぶん、今回明かされたデイストーンの秘密とも関つてきさうだ。
後書きがほとんど「ガーゴイル」のことばかりなのはどうかと思ふ。ところでコッペとガーゴイルは実のところ表裏一体といふか、似たもの同士なんだよな‥‥と気がついた。それでいて同工異曲といふ感じもしないし、大したもんだ。
文章表現で一箇所だけ引掛る点があつたが、これは編集者が気付いてフォローすべきところではないかな。

ネクラ少女は黒魔法で恋をする(熊谷雅人,MF文庫J) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J)

ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J)

今時「ネクラ」といふのもどうか、などと思ひながら読み始めた。
着想をそのまま形にしたといふ感じで、その着想自体は良いのだけど、各方面にあと一歩づつ踏み込みが甘い。なんでもネガティブに自己完結してしまふ主人公が変つていく様も、結局自己完結の域をあまり踏み出てゐない気がするし、その変化の切掛けとなる個々の事象についても割と簡単に流れてしまふ。悪魔を寄せ付けない伊丹書店の秘密とは? とか、大河内との恋を賭けた一大喧嘩が始まるのか? とか、出演するはずだつた舞台はどうなつた? とか、読みながらそれなりに期待を煽られた部分がいくつもあるのに、どれも何ともならなかつたのが惜しい。全部を欲張るとそれはそれで大変だけど、どれか一つにでも踏み込まないと一番重要なテーマまでも流れて行つてしまふ。それらは続編で回収すべきやうなものでもないと思つた。
丁寧に書かれた文章は読み易かつた。それが、良くも悪くも作品の内容を表してゐたと思ふ。