大和但馬屋日記

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譬へと例へ

丁度良いので「置換へ語」の話をしてみる。
私は正字体を用ゐないが、かといつて「譬へ話」を「例へ話」とは書かない。「例」は「譬」の新字体ではないからだ。譬喩としての「たとへ」と例示としての「たとへ」は異なる概念なのに、同じ字を用ゐるのはをかしい。試しにgoo辞書で「たとえ」を調べて見出語一覧を見ても、両者が本来別の言葉であることは窺へるだらう。
序でにいふと、「譬」も「喩」も「たとへ」といふ意味なのに、これを「比喩」と書くと全く意味が通らなくなる。「AをBと譬へる」ことと「AとBを比べる」ことが同じであるわけがない。「比」は「譬」の新字体でも何でもなく、ただ音に合せて別の字に置換へただけだ。
今「譬喩」と目にして「ひゆ」と読める人は多くないだらう。私もはじめは読めず、仕事で「けいゆ」と振仮名をつけて恥をかいたことがある。教はつてゐないのだから知らないのは当然だ。
しかし、読み書きが難しいといふ理由で、ある概念の意味が歪められてゐることは知つておいて損はない。そして、同様の「置換へ語」は他にも沢山あつて、既に復旧不能なものも少なくないのだ。