大和但馬屋日記

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それあ、ローラー買つたらそれに乗つて走るしかあるまいよ。乗つてみたさ。何だこれ。俺、自転車に乗れない人だつたのか。

この動画を参考にして、壁にもたれかかりながらペダルを回してみる。そして忽ち普段乗つてゐる自転車とローラーの上のそれがまるで別の乗物であると知る。
何が違ふかといふと、所謂一般的にいふ自転車とは慣性に頼り切つた乗物であるといふこと。数十キログラムの物体が数十キロメートルの速度で移動してゐるのだから、転ぶ筈がない。それに対して、三本ローラーの上に乗つてゐる同じ物体は、慣性がまるで働かない性質のものであること。どちらかといふとピストに近いのかもしれないが、たぶん違ふ。ピストとて、地上を走行してゐる限リは慣性の恩恵に少なからず頼つてゐる筈だ。漕ぐのをやめても、ペダルから足を離せば安定して前には進むだらう。対するローラー上の自転車は、純粋にジャイロ効果だけで辛うじて自立する運動体だ。慣性は何も手助けしてくれない。ローラーとタイヤの摩擦抵抗の御陰で漕ぐのをやめたらすぐに止まつてしまふし、一定速度で漕ぎ続けないと姿勢は安定しない。そして、自分が普段ペダルを如何に一定速度で回せてゐないかを思ひ知るのだ。
壁にもたれてペダルを回してみる。左右の脚で踏み込む力と、上下死点での力の抜き方がまづをかしい。長年SPDペダルを使つてゐてそれである。ペダルを数回漕いだら足が自然に休まうとする。意図せずに断続的に力を抜き入れしてゐる。上体はまるで安定してゐない。壁にもたれて尚ふらついてゐる。何て恐ろしい。
ペダルを一定に回せる様になつて、恐る恐る壁から離れようとするまでに十分くらゐ掛つた。既に汗がポタボタ落ちてゐる。何といふことだ、汗が風に飛ばされることもないからステムからトップチューブまで汗まみれである。早晩錆びるに違ひない。肘が壁から離れるまでにもう十分くらゐ掛つた。既にハンドルを握る手はクタクタである。腕も肩も無駄に緊張してしまつて力が入らない。むしろ、疲れ果てて力が抜けて、やつと壁から離れることができた感じだ。多少ふらつきながらもなんとか自立して走れる様になつてから四十分ほどで、姿勢を維持できる体カも集中カも失くなつて終了。一日サイクリングしたのに匹敵するくらゐ疲れた。
汗まみれになつた自転車を拭つて、風呂の湯が張られるのを待つ間にプロジェクターとXBOX ONEを点けたら画面がひどくボヤけてゐる。何だこれ。よく見ると、レンズが曇つてゐる。プロジェクターの真下で自転車漕いでたから、気化した汗が立ち上つてこんなことになつたらしい。慌てて窓とドアを開けて換気したが、窓の内側も結露してる。ひええ。これ全部俺の汗か…