大和但馬屋日記

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ばむばんか惰隠洞さんでデジタルリマスター版「ゴジラ」のことを知つてここ数日といふものソワソワしてたので、勤務先の「残業しちやいけない日」を狙つて定時後に行つてきた。何度となく観た映画ではあるけれども、劇場で観るのは初めて。昭和期のゴジラ作品を劇場で観たのは「ドラえもんのび太の恐竜」(勿論一作目の方)併映の「モスラ対ゴジラ」だけだつたもんな。
で、今までは今以上にボンクラな見方しかしてなくて本編の人間関係が今ひとつちやんと掴めてをらず、「このお姉さんはなんで男を乗換へようとしてるんだらう」といつた辺りの機微が分つてなかつたのだけど、お姉さんがお嬢さんに見える歳にもなつてやうやく、さうしたことがなんとなく胸に落ちる気がしたのだつた。
予測不能な未曾有の災害に対する人間の行ひの戯画も、現実の色々な事件なんかを思ひ出して、六十年前の映画から何も変つてないのだからこの映画の十数年前もまた然りなんだよなあと溜息をついたことである。山根博士の所属する学会がもし描写されてゐたらとかね。
映像のリマスタリング効果は素晴しく、品川辺りの鉄条綱のスケール感のある合成には「おおおっ!」と思つた。カメラのパンに合せきれずに一フレームずれるまでは正直合成と気付かなかつたよ。ゴジラの顔も独特の歯並びまでよく見えた。そして今回初めて思つたのは、ギニョール*1ゴジラが一番怖い。カットの繋ぎ方にも因るのだらうけど、いや本当に怖い。こいつは怪獣ぢやなくて、「化物」だ。
あとこれもリマスター関係ないけど、映像的クライマックスは中盤に持つてきて最後は静かに物語を畳むといふ流れが今となつては新鮮だつた。動物としてのゴジラ好きとしては可哀想な白骨死体なんか見とうもない訣で、心理的に「やめて止めてヤメテアゲテ…」とクライマックス状態ですが。まあ次作「ゴジラの逆襲」みたいにいきなりクライマックスからの中盤以降盛上がることなく終る展開なんかは困るにしても、あまりハリウッド的テンプレに縛られてばかりといふのもなあとは思つたのだつた。
うん、実に面白かった。

*1:腕人形