大和但馬屋日記

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FAQのやうなもの

とりあえず少なからぬ人をいい気分にしてくれるという効果があるのはわかった。科学的にはどうなんだろうね。砂次第かな。経済的には、今日の日経産業新聞に「おかげでNECの宇宙事業も黒字に」とかの記事があったけど、それは国民の生活に波及するんだろうか。

はやぶさの成果ってなんの役に立つの? - A legacy of パンクはいつも突然に

「砂が入つてゐるかどうか」は、はつきり言つておまけです。確率的には「何も入つてゐない」に賭けるべきでせう。何か入つてゐたとしても、それはボーナスと考へるべきものです。「はやぶさ」は工学試験機、つまり探査機ではなく今後探査機を作る技術を確立するための試作機なので、「小惑星の砂を採取して帰つてくる」といふ一連の「おつかひ」を果すことにこそ意義があり、ついでにいふとその一番肝心なところで失敗してゐます。イトカワに着地して、カプセルに砂を採取するための弾を発射するコマンドが実行されなかつたと言はれてゐるからです。ただ、カプセルの蓋は開いたと思はれるので、何か入つてゐたらラッキーと考へられてゐます。また、イトカワに着地して調査するロボット「ミネルバ」は着地に失敗し、イトカワの近傍で太陽を巡る天体になつてしまひました。これがもし「小惑星イトカワについて詳しく調査する」といふ探査計画であれば、大失敗としか言ひ様がありません。
しかし、繰返しますが「はやぶさ」は工学試験機であり、その中で目立つて大きく「失敗」したのは上記の二つだけです。不慮の事故を乗越えて、最終的に往還ミッションを果したのは大成功といつてよく、ともかくも「はやぶさ」のカプセルが回収されて中身が調査できる、そのプロセスをすべて「実行できた」といふところに意味があります。それを果したといふ事実に付随する全ての事柄を行ふ能力が「ある」と証明したことは、科学分野において日本の存在感を大きくアピールすることになります。これはナショナリズム云々とは関係なく、「国際的に一目置かれる」ことの重要性の問題です。簡単にいふと「株が上がる」といふやつです。
純国産の固体ロケットで宇宙にモノを投げ上げて、その運動エネルギーに天体の引力とイオンエンジンの推進力を加へて、複雑な軌道計算の末に六十億キロメートルもの距雛を旅して帰つてきた。それを可能にする力が、他所にはなくて日本にはある。ミサイルに転用できる日本の固体ロケットの制御技術はアメリカが欲しがるほどのものです。
これを見てアメリカはまた本気を出すでせうし、さうでなくても近隣にロケットの打上げに躍起になつてゐる国がいくつもある。NECをはじめとする「はやぶさ」の技術がそのまま民間に転用できる類のものかどうかはさておき、この成功がもたらした「国益」は馬鹿にできないものであると思はれます。それをどう評価するかは人それぞれとして。バランスシートに数字が乗つかる様な話ではありませんからね。