大和但馬屋日記

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お久しぶりね

憐 Ren 遠いキモチと風色のソラ(水口敬文, 角川スニーカー文庫) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

シリーズ完結作、本編としては三巻目。
完結はしたが、この終り方ならば一巻目の時点で終つたのと大した違ひはないやうな。二巻目で新たに登場した人物たちの話が勝手に決着しただけで、結局憐や玲人の行動が未来に影響を与へる訣でもなささうなのが物足りなかつた。まあ、そこまですべきかどうかは好みの分れるところだと思ふ。
ライトノベルの主人公の行動が青臭いのは悪くないといふか、むしろさうあるべきだとも思つてゐるのだけれど、この作品の場合は悪役たる大人の描写の方が青臭くて、そこが読んでゐて居たたまれない部分。「大人の論理」は、せめて大人が読んで共感できるものであつて欲しい。一巻目から感じてゐた未来世界の構造の有得なさといひ、世の中の大人はそんなに馬鹿ばかりなのかと。敵役かあるいは主人公達を導く役として一人でもいいから「魅力的な大人」が登場してゐれば、作品にもつと深みが出たと思ふ。たぶん、作者自身が「大人」嫌ひなのだらう。
口絵の導入部と、巻末のおまけ漫画はよかつた。絵師は良い仕事をした。