大和但馬屋日記

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「ARIA」の時間を考へる

惑星アクア(今から数百年後の火星)は一日の長さが地球(マンホーム)と同じ二十四時間で、一年が二十四箇月、凡そ七百三十日といふ設定である。つまり、アクアで一年が経つと地球では二年が経過する。それ以外の時間経過は、基本的に地球に準じたものとして描かれてゐる。特にマンホーム時間とアクア時間の間で同期をとつてゐる様子はなく、アクアはアクアの単位で一年を数へてゐるらしい。
となると、アクアの住民の年齢が不思議なことになる。地球産の灯里は十五歳、アクア生れの藍華は十六歳、同じくアリスは十四歳。アリスはミドルスクールの八年生と自称してゐる。描写相応に「中学二年生」とみて良いのだらう。しかし、藍華やアリスの外見年齢が灯里の年齢の実質二倍、といふやうなことはない。
漫画の「AQUA」第一巻から「ARIA」第七巻までを数へれば季節がほぼ二巡してゐるので、地球時間に換算すると四年近い月日が流れたことになる。灯里とアリスが出会つたのは灯里がアクアに来て一年が過ぎた後の話(「ARIA」第三巻)。灯里がアクアに渡航したのは、たぶん義務教育修了後の就職のため。でもアニメ設定では灯里十五歳にアリス十四歳なのである。
話の中で「一年が過ぎた」ことは何度も強調されるものの、「齢を重ねた」といふやうな話はない。如何にもありさうな、「誰かの誕生日」のエピソードも今のところ出てきてゐないのは、そのあたりの齟齬を嫌つて注意深く避けてゐるからだらうか。
だからどうかうといふのではない。むしろ、さういふアバウトな設定の上に描かれてゐるのだから、考証とか物事の前後関係とかをいちいち気に掛けながら読んだり観たりすべき作品ではないよといふサイン。