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歴史学ってなんだ? (小田中直樹,PHP新書) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

歴史学ってなんだ? (PHP新書)

歴史学ってなんだ? (PHP新書)

その名の通りの内容。歴史学の定義、歴史学と社会との関り方や位置付けなどを著者なりの視点で述べる。
面白かつた。読み易く分り易い語り口で、話題そのものは一見あちこちに寄り道もするが、ところどころに鋭い指摘が含まれてゐる。歴史学に留まらず、「物の考へ方」の変遷の概略を知るのにも良い。
歴史学は社会の役に立つか」あるいは「社会の役に立たねばならないか」といふ問掛けは、歴史学だけでなくあらゆる学問、あらゆる文物に共通する。これに対する著者の答は以下のやうなものだ。

直接に社会の役に立とうとするのではなく、真実性を経由した上で社会の役に立とうとすること。集団的なアイデンティティや記憶に介入しようとするのではなく、個人の日常生活に役立つ知識を提供しようとすること。このような仕事に取り組むとき、歴史学は社会の役に立つはずだ

これには「役に立とうとするほうがよいに決まっているが、そうしなければならないとまではいえない」という、ちょっと中途半端なものになりますといふ前置きが付く。全く、歴史学だけの問題ではない。何につけても、近視眼的な即効性にばかり重い価値を求めると、物事を歪ませてしまふものだ。

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