大和但馬屋日記

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座標系

三次元CGを理論的に齧るなり、飛行機の操縦について学ぶなりしたことがあれば、今改めて言はれる「天動説は正しい」云々の説がただ単に「どの座標系を中心に据ゑるか」を言ひ換へただけにすぎないことはすぐに分るはずだ。
CGの場合、グローバル座標、ローカル座標、カメラ座標といふ少なくとも三種類の座標系が大まかに存在する。局所的にはさらにUV座標だの何だのと扱ふ座標系はさらに増える。そして、あらゆる座標系は別の座標系に変換することができる。
しかし、たとへばある仮想空間内のオブジェクトに貼られたテクスチャマップ画像のST座標値を仮想空間上のグローバル座標系に変換する必要などはまづ有り得ない*1し、あるオブジェクトの座標はカメラ座標系の外にあると判断された時点でレンダリングの計算対象からは外されるなど、その場に応じて用ゐられる座標系は異なる。だけども結局それらは全体の大きな系、場合によつてはグローバル座標系よりも上位の系(座標系ですらないかもしれず、オペレータが関知してもゐない可能性さへある)のごく一部でしかない。
地動説に話を戻すと、これは単に「地球が太陽の周りを公転してゐる」といふレベルの話ではなく、マクロ的な宇宙論の根幹に関る重要な説だらう。そして、マクロ宇宙論ではそもそも宇宙に絶対的な座標があることを示唆してはゐないはずで、だからこそ相対論といふものが存在する。さういふ枠組に対して「地球から見たら天が動いてゐる様に見えるから天動説も間違ひぢやない」と言つて哂ふのは、それは難癖といふものだ。一方、そこまで突き詰めると地動説が等しく正しく理解されてゐるとも言へないわけで、ニンともカンとも。

*1:テクスチャのST座標はオブジェクトのUV座標と対応してゐれば用済みである