なぜか(なぜかつてことはないか)ARTIFACTでタブレットPCの話題が出たので補足的な情報を。上掲の記事で紹介されてゐるWACOMのタブレットドライバについて、私の立場からは必要ないものだと思ふ。このドライバの売りはPhotoshopやIllustrator等のタブレットPC非対応のアプリケーションでも筆圧感知が可能になるといふものだが、ぢやあタブレットPCでPhotoshopを使つて絵を描かうか、といつた場合に筆圧以前に問題が多すぎるのだ。そもそもインターフェースの設計がタブレットPCのことを全く考慮してゐないので、扱ひ辛いことこの上ない。Photoshopの本分は、高解像度の横長画面でキーボードショートカットをバリバリ使ひながら画像を編集したいときにこそ発揮される。Illustratorも同様だ。
あと、これは環境にも拠るのだらうが、うちのDynabookSS3500に同ドライバをインストールすると、タブレットPCネイティブのツール、例へばAlias Sketchbook Proやコミックワークス*1などで画面の回転にタブレットが追従しないといふ不具合が生じてしまふ。これでは本末顛倒だ。そこまでしてPhotoshopを使ふ必要などない。
「Photoshopが使へますよ〜」といふのはグラフィックユーザーを呼込むための餌として必要な文句なのだらう。しかし、さうして釣られた人が実際に使つてみて、「何これ使ひにくい〜」→「タブレットPCイラネ」となる方が、私にとつては怖い。ハッキリ言つて、タブレットPCでPhotoshopを使つても幸せにはなれない。正しくPhotoshopを本来のイメージ編集ツールと割り切つて、絵を描くためのツールではないと思はなければ、本当のメリットは見えてこない。
絵を描くツールとしてのAlias Sketchbook Proは優秀だ。Painterほどではないのかもしれない*2が、サッと起動して絵を描いて仕上げまで持つていく、といふ作業ならこれひとつで十分事足りる。実際、今の私はこのツールのおかげで飯が食へてゐる。絵コンテやレイアウト用紙として使ふには、予めIllustratorか何かで枠線を作成しておき、十分に高解像度のTIFFファイルとして保存しておけばSketchbook Proでテンプレとして利用できる。このレベルの作業なら完全なペーパーレス化も可能だ。
もちろんPhotoshopが不要だと言ひたいわけではない。繰返しになるがPhotoshopはイメージ編集ツールであつて、イメージ素材を生成するにはいろんなアプローチを取りうる。その手段の一つとして、タブレットPC + Alias Sketchbook Proは極めて強力だ、といふことをしつこく強調しておきたいのだ。Photoshopは狭い画面でペンタブのみで我慢して使ふべきツールではない。
だから、神レベルのPhotoshop使ひの人にまでわざわざ勧める気はないが、しつかりした根拠もなしに「Photoshopぢやないとダメ」と思ひ込んでしまつてゐる人には、まづさういふ思考を捨てて欲しいな、といふのが切なる願ひである。
ここまで読んで、「だつたらタブレットPCなんてイラネ」といふ人には、正直勧めても仕方ないと思ふ。でも、メジャーアプリの名で釣つて悪印象を持たれるくらゐなら、タブレットPCならではの楽しさ、便利さがきちんと伝へられるべきだらうな、と思ふのだ。誰の手で?
ムネン
アトヲ
タノム