大和但馬屋日記

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百点満点で百点に満たない映画つてのは詰り「観るんぢやなかつた」「観て損した」と思ふ評価なのであり、「インターステラー」が百三点といふのは「観てよかつた」といふことに他ならない。
大筋としては「二〇〇一年宇宙の旅」に「ディープインパクト」を混ぜて、出来たものは「最終兵器彼女」だつたみたいなイメージを持つた。ある父娘の関係性だけで世界の存亡が語られてゐる辺り、所謂セカイ系の香りも感じたり。
映画の中でロジックが完結してゐるといふ意味ではよくできてゐるし、そこにかなりの神経を使つたのだらうと思つた。ただ、それが為に、すベての御膳立てがロジックを収束させるのを目的として配置されてゐる様に見えて、正直言ふとSF的にあまりときめかなかつたのだな。「綺麗な伏線回収」は良い物語の要因にはなり得ても、良い映画の為の条件といふべきではないし良いSFの為には必要でないと思ふ。勧めてくれた友人は「これがSFだ!」みたいな調子で絶賛してゐたのだけど、さういふ観点ではあまり楽しめなかつた。小賢しい伏線などといふ人智を台無しにしてこそSFだと思ふから。
ブラックホール周辺で何が起るかとか多次元解釈とかをどうやつて映像化するかといふ点に関してはどちらかといふと綺麗な絵作りで「逃げた」感じがした。ロシュ限界をどう回避したか等の説明はなかつた様に思ふし。勿論逃げずにどう映像化できるのかといふ答へは天才ならざる自分には無いし、逃げ方としては最高級レベルの良い物を見せていただいた訣で、まあ三次元世界の住人としては今のところこれが精一杯なのかな。バクスター小説中性子星内部の世界なんか映像化できる気がしないもの。
映像として、「雲も凍る」星の描写は良かつた。ブラックホール近傍のハビタブルゾーンの星の空がどう見えるかについてはもつと想像の翼を拡げる余地はあるね。地球の昼の様な空は地球にしかないと思ふんだ。
不満としては何が理由で地球があんなに荒廃することになつたかと、実際にどのくらゐ荒廃してしまつてゐるのかを示す絵が少しでも欲しかつた。「風が吹くとき」の様な破滅の迫る田舎の家といふ描写の雰囲気で分れといふ作りなのは理解したが、それが話のスケールを徒に小さく見せてしまつてゐる様で、宇宙的スケール観に合つてゐない。意図としてはそのスケール感の対比をこそやりたかつたのかな。それが「セカイ系」に見える理由でもある。「パシフィック・リム」の冒頭五分間の説明パートは秀逸だったよね。これはパニック映画ではない、といふ抑制を効かせた結果として納得できるのでいいけど。
何よりいいと思つたのは「インターステート」の拡張としての「インターステラー」といふ用語で、観る前から「さういふ意味かな?」と予想して観たらその通りだつたので内心小躍りしたよ。
まあ一通り書いたものを読返すとアレだ、凄いものを観たんでもつと凄いものを要求してしまつてるクソオタそのものですな。さういふ心を誘発する映画です。