大和但馬屋日記

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F1スペインGP決勝。銀色の車が、あー。あー。あー。八十九年と九十年の日本GPを見てゐるかのやうな。あー。ハミルトンのスタートは悪くなかったが一コーナーではロスベルクが先行、しかし三コーナーの加速が鈍く、ハミルトンがかなりのスピード差で追ひついてしまふ。四コーナーまでの短い直線でハミルトンがインに入りかけ、ロスべルクがそれを厳しく締めた。ハミルトンは行き場を失ひグリーン上でマシンがスピン、コントロールできないままロスべルクを巻添へにして四コーナー外側のグラベルへ吹飛んだ。あーあーあー。レーシングアクシデントだねえ。といふかどちらかといふとゲーミングアクシデントだなあ。両者とも、リスクに対する認識が皆無だつた。わざと危いことをしてやつたのではなく、互ひを信頼してゐた訣でもなく、ただ寄つて来たから閉めた、ただ空いてゐたから突込んだ。ゲームやつてるみたいな操作の結果。まあ、ハンドル握つてたらさうなるものなのだらうから、「あそこで無理に行かなくても」なんて風には思はない。上手いとか下手とか賢いとか馬鹿とかぢやなくて、あの二人があの状況になつたらああなるよ、といふこと。これは現象であつて行動ではないんだ。自動的なんだよ。
早速ニキ・ラウダがハミルトンに批判的なコメントを出した様で、まあラウダならさう言ふよね、とは思ふ。勝ちだけを考へればね。でもさ、コース上に自分より明らかに遅い車があつたら抜きに行くのがレースつてもんだ。
メルセデス二台が一周目に消えてセーフティカーになり、レースが再開した時にトップに居るのがリキアルド、フェルスタッペンサインツレッドブルファミリー。ここにクビヤトが絡んでないのが皮肉よね。そのクビヤトはセーフティカー中に他車を二台も抜いたとのことでポジションを戻せと無線。「何でよ!」いやだからさあ。大丈夫かこの子。
レース終盤、レッドブルフェラーリのタイヤの使ひ方を巡る心理戦になつてきた。レッドブルが戦略ミスしたのに付合つてフェラーリもちよつとグダグタになつてゐる印象。リキアルドとベッテルを勝たさうとしてる内にフェルスタッペンかライコネンが勝つかもといふ展開。リキアルドは完全に戦略ミスで勝機を失つた。フェルスタッペンが残り二十二周でトップに立つたが、後ろのライコネンの方が速い。フエルスタッペンにライコネンが追ひ縋るがなかなか抜けるところまでは迫れない。
後ろではベッテルとリキアルドもずつと接近戦を続けてゐるが、五十九周目にリキアルドが仕掛けた。タイヤがぶつかるほどの際どい寄せ方で一瞬は前に出たがベッテルが抜き返す。その後も激しい攻防が続く。首位争ひと三位争ひ、どちらも何が起るか分らないから面白い。ベッテルとリキアルドがここまでガチに殴り合つてるのつて、実は珍しいのかな? チームメイト同士の時はベッテルが精彩を欠いてゐて相手になつてなかつた様な。それにしても低速コーナーのフェラーリの動きが悪いねえ。この二人のバトルはリキアルドのタイヤバーストで決着してしまつた。何があつた? 接触などはなかつたと思ふが。それでもリキアルドはタイヤを換へて四位のままレースを終へられた。
一方の首位争ひ、川井氏日く「ライコネンはヨスとマックス、フェルスタッペン親子の両方と戦つたことがある」。さういへばさうだ。マックスがライコネンを最後まで抑へ切り、自身初優勝。クビヤトとシートを交換した最初のレースで最高の結果を出した。マックスはオランダ人としても初優勝、そして十八歳といふことで当然史上最年少の優勝者でもある。今季、ここまでドイツ国歌一曲しか流れたことのない表彰式で聞いたことのない国歌が流れた。
マックス・フェルスタッペンの才能は疑ふベくもないし、かつてベッテルをさうさせた様に若いオ能を輝かせるレッドブルの「御膳立て」の力も相変らず神掛かつてゐるけれども、その陰に隠れたクビヤトのことを思ふと何だかもぞもぞしてしまふ週末だつた。