大和但馬屋日記

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出勤日だつたが仕事だけで終らせるのも悔しい気がしたので「ガールズ&パンツァー劇場版」のレイトショーを観に行つた。一回目は展開を追ふだけで精一杯だったが、TV版とOVAを通して観直した直後の二回目となれば色々と見えてくるものがあつてより楽しめた。
ストーリーはあつて無い様なもの、その内容も性急すぎると最初は思つたもののTV版の展開を改めて踏まへれば言ふ程のことはない。みほがIV号を手にしてから最初の五台の戦車が揃ふまでが一日、練習試合はその次の日で、五台のいづれも前日まではスクラップ同然だつたことを許せるならば映画の展開の唐突さ性急さなど屁でもなからう。
細部の小ネタにも目が行つた。サンダース大付属校の運用するC-5ギャラクシーに「サンダーバード」のロゴを真似た書体の「サンダース」ロゴが貼つてあつて笑つてしまふ。「THUNDERBIRDS」と「SAUNDERS」で綴りは全然似てない上に「サンダーバード」はイギリス作品。なんでアメリカ被れのサンダース高に、と思つたがやつてることは金持ちが輸送機で大洗女子の戦車を救助するつてシーンなので確かにサンダーバードなのだつた。
サンダース高といへばアリサがうさぎさんチームに弄られるシーンが大変良くて、そのうさぎさんチームといへば大洗一の成長株で、アンツィオOVAでの技能向上と意識の変化、TV版決勝戦での大活躍を経てのこの映画内での更なる成長つぷりは実に見事だつた。ポストあんこうチームとして、みほvs梓の将来の師弟対決も見てみたいと思ふ。
暴走しがちな知波単学園を制止するカモさんチームや後半で共闘するアヒルさんチームも楽しい。戦車の動きと中の人が完全にシンクロしてゐて、最早戦車そのものが喋つて動いてゐるかの如し。「きかんしゃトーマス」みたいなものだ。トーマスといへば、後半の戦場の遊園地にトーマスよろしく顔付きの戦車があつて、何だと思つたら重駆逐戦車トータスらしい。「せんしゃトータス」つてか。
買つたばかりの虎の子のP-40でもセモヴェンテでもなく豆戦車カルロベローチェで臨んだアンツィオ校、キャラクター的には彼女らが最高だつた。ノリと勢ひだけではなく、アンチョビは頭が回るし気配りもできる優れたドゥーチェであるといふのはOVAでも示されてゐたが、それがちやんと活かされた立回りをしてゐて、最後はやつぱりノリと勢ひで締めるといふ話的にも絵的にも美味しい役どころ。アンチョビとペパロニとの漫才も楽しい。等々一々挙げてゐたらキリがなくて映画全部をネタバレしてしまひさうになるからこの辺にしておかう。
ともかくかうして二時間ギッチリネタを詰め込んで、各チームそれぞれに見せ場を作つた手腕は、流石にあの「おおきく振りかぶって」の試合を演出しきつた水島努監督なのだなあと思つた。あとはさおりんに見せ場があれば…とはいつまでも言ひ続けると思ふ。前に書いた通り、個別エピソードはなくともTVシリーズの下支へとしては最大の功労者だつたのに、その個別エピソードがないといふ弱点が映画にまで及んでしまつて不憫だつた。