大和但馬屋日記

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フォーミュラE開幕戦。電気自動車でエコだエコだと喧伝してゐるがバッテリーが持たない、かつ交換できる構造のマシンではないので、レース中にマシンごと乗り換へるといふ、レースの概念より先にエコの概念すら再定義しなければならない本末顚倒の珍レースが始まつた。一往こんなんでもFIA公認の世界大会なのよ。
2014-08-14 - 大和但馬屋日記で触れたこの「Forza5」のモデルの取材時点ではバッテリーもラジエーターも搭載されてゐなかつた様で、やはり実際はエンジンブロックの収まるべき位置にV型エンジンを模した様な巨大なバッテリーパックが車体構造のストレスメンバーとして組込まれてゐる。サイドポンツーン内にもガソリンエンジン用のそれに引けをとらない大きなラジエーターが置かれてゐた。バッテリー重量だけで三百キログラムを超えるさうだ。バッテリー容量の都合で全開だと三周程度しか走れず、二十五周のレースを成立させるために二台のマシンを乗り継いでパワーセーブとエネルギー回生で何とか走り切るといふコンセプトのこのレース、ドライバーの陣容だけは地味に微妙な豪華さで何とか見処となリさう。
緒戦の北京のコースだが、とにかくコースが狭い。一周の短さもさることながら、直線主体のコースをシケインで味付けしてゐるために何とも狭苦しい。ちやんとレースになるのかな。
さてスタート、一周目にブルーノ・セナがクラッシュしてセーフティカー。起用されたのはBMWのi8。今回映つた中で一番格好いい車だなこれ。
レース再開、それなリにバトルもあつて意外に悪くない。マシン乗換へ。このルールだけはどうかと思ふなあ。一チーム当り四台つて、F1より持込み台数が多いぢやないか。
レース終盤、リ一ドしていたニコラ・プロストニック・ハイドフェルトが迫り、最終ラップの最終コーナー手前で仕掛けたところでプロストが幅寄せ。もろに当つてコントロールを失つたハイドフェルトの車が蒲鉾状の縁石でジャンプして逆さまになりウォールに激突した。幸ひ、ニックは自力でマシンを降りてプロストに走り寄り抗議する元気さを見せてゐたので良かつたが、肝の冷える事故だった。この事故で勝者はルーカス・ディ・グラッシとなつた。
まあ、正直色々とグダグダではあつたものの、意外に見処のあるレースではあつたと思ふ。最後のあの事故は勿論ニコラが悪いけれど、そもそもの話で言ふとコースの設計が悪い。最終コーナーはただの直角コーナーで良かつたのに、あそこだけ態々イン側に蒲鉾を盛つてコーナーの幅をマシン一台分にまで狭め、アウト側のウォールへのクラッシュを誘ふ様な無意味な形だつたからだ。思ひ切つて最終コーナーへの飛込み勝負が出来ないレイアウトだからニックも手前で仕掛けざるを得ず、それがニコラの危険な幅寄せを誘ひ、剰つさへニックを打上げるジャンプ台にまでなつてしまつた。結果論ではあるが、F1のシンガポールGPでも蒲鉾が危険視されて撤去された前例はあつた訣だし、スピード抑制の手段としてももう少し考へ様はあつたのではなからうか。どうせ大した最高速も出ないのだから安全にバトルのできるコース設計を心掛けるべきだらう。
電気自動車だからどうかうといふのはいざ走つてみれば割とどうでもいいことだと思つたので、新たな一カテゴリとしてこなれてくればいいんぢやないかな。