大和但馬屋日記

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祖母はたしか今年あたりで八回目、数へで言へば九回目の生れ歳を迎へるほどの高齢で、大した持病もなく元気に暮してはゐたのだが、流石に肉体的な衰へには勝てず、見兼ねたうちの父母が引取つて大阪で暮し始めたのが今月に入つてのこと。半月後に脳梗塞で臥れて緊急入院となつた。ICUから出てみれば運のいいことに後遺症もそれほどはひどくなく、身体もそれなりには動く様で安心した。頭もはつきりしてゐる様だが、残念なことに言葉はちやんと発声できなくなつてゐた。
本人としては臥れた記憶がないものだから、自分はどこも悪くないと思ってゐて、なのに気が付けば鼻にチューブを差された上に寄つて集つて病人扱ひされてゐる現状が甚だ不本意であるらしく、時折悔しさうに涙を浮ベてゐた。あまリに動きたがるものだから、病院からも要注意扱ひされてゐるらしい。
昔から、周囲に常に気を配つて世話をするのが好きで、人に甘えたり怠惰な素振りを見せたりしたことなど一度もない人だから、今我が身の置かれた状況に苛立つて仕方がない様だつた。気持がさういふ風であるうちはまだまだ恢復の余地もあるだらうと信じたい。
「また来週来るからな」と言って病院を後にし、東京への帰途についた。