大和但馬屋日記

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くねくねしてみた

yms-zun2011-03-08

一昨日付の日記につけていただいたブックマークから辿つて読んだ記事。

あれ、この鹿野氏のブログはRSS購読してる筈なのにこの記事は読んでなかつたな。まあそれはさておき。

で、面白かったのはそれではなくて、この走っている台車の上から、真横にブーメランを投げたら、ブーメランはどこへいくかって実験。
ブーメラン投げる人は、日本チャンピオンだかの人で、地上なら、投げたところに確実に戻せる腕前の持ち主。
で、まあ、これは物理を知っている人なら、結果は台車の上から投げようと、投げた人のところに戻ってくるだろうなって思うと思う。
動いている台車にのって、真上にボールを投げたら、そのボールは、投げた人にとっては真上に上昇し、そのまま真っ直ぐ下に落ちてきて、キャッチできる。慣性の法則ね。台車に乗ってない人から見ると、ボールは台車の速度分前方に飛び出して、放物線を描いて、投げた人にキャッチされる。
ブーメランはこれが横になっただけと考えればいい。
で、学者の過半数は、ブーメランは投げた人のところに戻ってきて、キャッチできると答えた。オレもそうなると思った。
ただ、理系の学者でも、物理とか工学系でない人の中には、戻ってこないという人もいて、それはどうよって感じではあったが。

http://blog.blwisdom.com/shikano/201101/article_4.html

当該番組を観た訣ではないので、この文章から受けた印象だけで書いてしまふけど、いやいや、それはどうよ。

動いている台車にのって、真上にボールを投げたら、そのボールは、投げた人にとっては真上に上昇し、そのまま真っ直ぐ下に落ちてきて、キャッチできる。慣性の法則ね。台車に乗ってない人から見ると、ボールは台車の速度分前方に飛び出して、放物線を描いて、投げた人にキャッチされる。
ブーメランはこれが横になっただけと考えればいい。

これ、をかしいよね。ちゃんと考へればすごくシンプル。
ブーメランは、投擲による放物線運動(無重力下では直線運動)を回転による揚力が捩じ曲げることによつて円軌道を描く訣だから、移動体のエネルギーによつて初速度が増しても円軌道が大きくなるだけの筈だ。曲がる力そのものはブーメランの回転によつて生じるのだから、初速度とは無関係。移動体から横向きに投げても、円軌道の最初のベクトルが客観的に変化はするが、円の形自体は変らないはず。
移動体上の手許に戻つてくる為にはブーメランは客観的には螺旋軌道(といふか筆記体の英小文字のl(エル)の様な軌道)を描かねばならず、つまり曲率を経時的に変化させる外的要因が必要となる。そんな要因は、どこにもない。
図に描いてみた。

それぞれの力のかかり方を単純に図にしてみた。雑で悪いが、青い軌道は正円に近いものと思つて見てほしい。グレーの線を描くために自然な力のかかり方を見出すことはできない。
おそらく陥りがちなのは、図中のブーメランやボールに対して「常に」マゼンタで示したEの台車の力が加はつてゐるといふ錯覚だと思ふ。もちろんそんな訣がなくて、赤い矢印の方向に投げたつもりでも実際はマゼンタのベクトルが加はつて、シアンの方向に飛んでゐるといふのがここでいふ「慣性」の正体なのである。マゼンタの力で「常に」加速し続けない限り、ブーメランは台車に追ひ付くことなどできる筈がないのだ。

もしこの実験が、台車の上に乗って動いている東京ドームみたいなところで行われたとしたら、東京ドームが動いていようが止まっていようが、ブーメランは投げた人のところに戻ってきたはずだ。

投げる人が移動を意識して云々といふのは無視すべきとして、宇宙ステーション上でブーメランが戻つてきたといふ実例はあるからこれは正しいのだらう。慣性系が違ふのだから当然だと思ふが、言ひ切る自信はない。