大和但馬屋日記

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陸上自衛隊の訓練指揮官が10日に鳩山首相を批判したともとれる訓示を行った問題で、北沢防衛相は12日、この幹部隊員を処分する考えを明らかにした。
この問題は、10日、宮城県内で始まった日米共同訓練で日本側の指揮官を務める中沢剛連隊長(47)が、「同盟関係は政治・外交上の美辞麗句で維持されるものではなく、ましてや『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない」と訓示したもの。

“首相批判”の訓示 陸自指揮官を処分へ|日テレNEWS24

公の場で正しいことを言ふと処分される国ニッポン。街中で「スターリンは馬鹿だ」と叫んだ男が逮捕された、罪状は国家機密漏洩だったといふジョークを思ひ出す。それにしても、背筋が凍るほどに言霊の国だなあ。

追記

自分は、「言つてゐる言葉の内容」は正しいと思ふ。つか、そこしか見てゐなかつた。場と人を考へれば、書面で注意を受けるのは仕方ないですな。でも、訓練指揮官が訓練に当つての統率を促すためにハッパを掛けただけだよね。これからやるのは言葉でなくて行動だと。「貴様等が口から垂れ流す糞の前と後ろに必ずサーを付けろ、分つたか」みたいな。まあ、「公の場で」といふのとは違ふかもしれないんで、これは私の間違ひ。
アメリカなら首が飛ぶといふのはアメリカの流儀なので、そこは何とも。文民統制といふものについては、怪しいなと思つてゐる。概念としてのそれを否定はしないけど、文民の側がそれに胡坐をかいてゐることこそがクーデターの種になるのであり。今回の「不適切」な発言に自分は現場の抱く不満と不安と歯痒さの一片を見た気がする。これを形式的に抑へつけるのだけが文民統制といふなら、その崩壊は遠くないかもしれないな、と。自衛隊員だつて人間だからね。遵ふべきは制度か人かといへばもちろん前者だし、件の指揮官がそれに反したのはその通りだけど。
要するに、ヤバいのは「自衛隊の偉いさん」ではなく自衛隊を内包する日本といふ国そのものなんぢやないかなといふのがこの件で思つたことです。いきなり話を大きくしたみたいで何だけど、あれが揶揄だつたとして、なんであの場でそれが出てきたのかな、とは考へてみてもいいと思ふ。考へ無しの軽口だつたら、まだいいんですけどね。中に何か燻つてんなあと。酒場で愚痴ッてればいい話を訓示の場で言ふな、といふのは、まあその通りですな、ハイ。

さらに追記

もう少し考へた。今から合同訓練するよ、と言ふときに何を言ふべきか。「同盟関係は政治・外交上の美辞麗句で維持されるものではなく、ましてや『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない」。前後に何があつたかはともかく、ここだけ見れば、「言葉は言葉。我々はその言葉を行動で実現する」といふ意味にしか取り様がないと思ふんだよな。今自分たちがやらうとしてゐることを正当化してゐるだけ。訓練の場で訓練の意義を言葉で飾つて意識を発揚するのは当然だ。これを「揶揄」と取ること自体が「スーツ的」だといふ気がしてきてならない。この言葉尻を捉へたのは誰なんだらう。これはつまるところ政治的な足の引張り合ひにすぎないと思ふ。
「同盟関係は政治・外交上の美辞麗句で維持されるものではなく、ましてや『信頼してくれ』などという言葉だけで維持されるものではない」。この後に「我々自衛隊員は本日この訓練を通じて、日米相互の同盟関係が言葉だけでなく、より強く堅いものとなることを証明しなくてはならない。諸君の奮闘努力に期待する」とでも続いてゐたとしたら、それでも尚前半部分は現政権への揶揄ととられ得るだらうか。もしさうだとしたら、それあさう聞いた奴が悪い。まあ、こんな下手糞な作文は別にしても、それなりの訓示内容ではあつたんぢやないのかしらね。結局、文脈を断ち切るのがよくない。

-kahusi 政治 2010/02/14