大和但馬屋日記

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ルイス・ハミルトンのこと

このダイアリーとF1日記とを分離してゐるおかげで、こちらにF1のことを書く機会は滅多にない。昨日はとにかくベッテルが最高だつたのだが、それについては2008年第14戦イタリアGP決勝 - 大和但馬屋F1日記 - formula1グループで十分だらうといふことで、こちらにはハミルトンのことを少し書く。
いやまあ、すつかり悪タレ小僧になつちまつて。今、ルイスについて何か褒めたところで「ハァ?」と白い目で見られるのがオチだつたりするのだが、でも、ワシはやつぱり嫌ひではないよと、昨日のレースで改めて思つた。
だつてさ、獲得したのはたつた二ポイントとはいへ、十五番手から七番手まで追ひ上げたんだよ? 今年最も速いマシンに乗つてそれかよ、とはいへる。けど、展開としてこれほどまでに荒れなかつたウェットレースはないんぢやないかと思へるほどの状況で、八台も抜いたんだから大したものだ。同じくらゐ速いはずのフェラーリは、一つ前のマッサがスタートと同じ順位でフィニッシュ。ライコネンに至つてはあれだけファステストラップを連発してゐながら、たつたの二台しか抜けずに十二位。なんか、かういふのがチャンプ争ひしてるといふのが情けなくなつてくる。
もちろん、今回のレースでもルイスに良くない点はあつた。終盤のウェバーとの接触なんか、ああいふことをやつちや駄目だ。小倉氏が「GP2時代から周囲のドライバーに怖がられてゐた」と説明してゐたが、コース上で危ないと言はれてはいけない。そのドライビングスタイルはどうにかすべきだらう。
でも、それ以外のことはどうでもいいんだ、ワシは。レースで前に出ようとしない奴よりは、一人でも抜いて前に出ようとする奴の方が正しい。コース外でどんな発言をしてゐやうが、そんなことは知つたことぢやない。
スタートしたら、ただゴールだけを目指す。勝つことしか考へない。今はまだ若いから、それだけで精一杯なのだらう。たかだか二十二、三の若造に人格的なキャパシティがあるわけがない。F1といふ大舞台でチャンピオンを争へるチームを得て、一杯一杯の未熟な精神をどこに振り向けるべきかといへば、それあチャンピオンを獲ること以外にあるわけがないぢやないか。
さう、彼の抱へる問題は結局のところ「若すぎる」といふ点にしかない。セナがF1デビューしたのは二十四歳。プロストとやりあつて「危険な若いドライバー」と言はれた時には三十歳を迎へてゐた。そのセナと互角に渡り合つたアレジは二十六歳の「若手」だつた。昨日、二十一歳のベッテルに最年少優勝者記録を破られたアロンソは、参戦八年目のベテランである。まだ二十七歳なのに。ライコネンアロンソと同期だが、こちらもまだ三十にも満たない。ハミルトンが精神的に未熟なのは彼個人の問題だとしても、F1ドライバーの平均年齢が特に今世紀に入つてからあまりにも若くなりすぎてゐるといふ背景にも目を向けるべきだらう。
ハミルトンの問題はいづれ時間が解決する。その時までに彼が彼自身の居場所をF1から失はない限りは。願はくば、時が満ちたら「ワシはデビューからずつとこいつのファンだつたんだよ」と偉さうに言はせてほしいものだ。
イタリアGPのスタート前のグリッド上にエマーソン・フィッティパルディの姿があつて、テレビがそれを大映しにした。彼こそはアロンソに記録を破られるまでの三十三年間、史上最年少優勝者記録を保持し続けた男だつた。そのレースで同じ記録がまた破られることになるといふ予感が、テレビカメラに宿つてゐたのだらうか。

追記

けんさわ氏の書かれてゐることに納得するなあ。まあ、居場所の主張の仕方にもいろいろあるといふことよね。トラック上然り、F1界そのものも然り。

  • 008年09月15日 funaki_naoto sport