大和但馬屋日記

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川崎港巡り(十月十一日記載)

鶴見のあたり、といつてもよく分らんのでとにかく海に向けて走る。産業道路を渡つて貨物線の跨線橋に上つたあたりから前方の風景が急に面白くなつてきた。ケミカルな工業の煙突が林立し、製油所か何かの尖塔の先端に炎が燃え盛つてゐる。日もいい具合に暮れてきた。これよこれ。
工場への引込線の様な線路が道沿ひに見え始め、さらに大昂奮。「神奈川臨海鉄道」の標識を見つける、当然旅客扱ひのない貨物輸送専用の路線に違ひあるまい。
線路が道路の一番外側、歩道のさらに外に敷かれてゐて、沿道の各工場の玄関先を申し訣なささうに横切る線路が面白い。一旦停止の標識が歩道でなく線路に向けて立つてゐる。勿論踏切なんてない。休日なので列車がやつて来る様子はないが、一度は走つてゐるところを見てみたいものだ。送電線の鉄塔が線路を跨いで立ち並ぶ絵なんて、どうだ、堪らんぢやないか。
送電線の大元、東電の火力発電所の手前で線路が駅も何もなく突然終る。発電所の建物も何やら格好いい。この先は海底トンネルだから歩行者や自転者は当然‥‥ん? 何やら自動音声が。「通風塔横の通路を通れ」? 行けるんかい。
嬉々として通路に入る。最初のスロープ下に自動ドアがあるのは保安上の理由か。さらにスロープを下ると‥‥長ッ。「歩行者専用なので自転車は降りて通れ」と音声が永久ループで流れてゐるが、すまん、普通に走つちまつた。他に通行者も居なかつたし。後で地図で測つたら三百六十メートルもあつたよ。
地上に出てみればそこは京浜運河に面した埠頭。釣客がまばらな中に、ラーメンの屋台トラックがあるのが何となくシュールだ。
羽田から飛立つ旅客機を眺めたり、先刻近くで見た火力発電所を遠望したり。そして西の空を見ると、赤い空に浮ぶあの影は富士山か。
ここまででも十分に濃い一日だつたが、話はこれで終らなかつた帰り道。つか、案の定鶴見には行つてない。