大和但馬屋日記

はてなダイアリーからの移行中

クサイモノとかゴミとか

id:mittyさんの議論の進め方自体はいつも論理が明快で、まあ有体に言つて対立する一部の方々に比べれば充分な説得力があることを仰つてゐるとは思ひますし、そのことと話が通じると思って話す、その姿勢は掛け値なしに尊敬に値すると思つてゐるのだけれども。

キーワード空間の秩序、ということはもはや考えない方がよいのかもしれません。
(略)
捕捉閾値をある程度高く設定できれば、クサイモノニフタをしてはてなダイアリーを利用できるはずです。
街中がゴミであふれかえったとしても、目に入らない限りそれは「存在しない」のと同じ、という割り切りが必要かもしれませんが。

この考へ方には到底同意し難い。以下にさう考へる理由を挙げます。


まづ「キーワード空間の秩序」について。id:yms-zun:20030604において、キーワードツリーの分類について一悶着あつたときに示した私の見解を抜粋する。

さて、キーワードとはそもそも何か。特徴は色々挙げられるが、本質的には「はてな」のサーバにストックされる、オープンかつフラットなデータの塊だ。

「ではオープンでフラットなデータなら使ひにくくて良いと貴様は言ふのか」と思はれただらうが、ここで考へて欲しいのだ。といふより、我々が考へるべきだつたのだ。データは所詮データ。キーワード自体の私物化は禁じられてゐるが、キーワードの利用法には何の制約もない。
ならば、自分の日記ページで、あるいは「はてなダイアリークラブ」の中で、思ふ存分、好きな様に分類してインデックス化すれば良いではないか。これが今回オレの言ふ「提案」だ。

キーワードシステムは、はてなが用意してくれた一つの素材にすぎない。今まではその素材のあり方を巡つてあれこれと揉めてきた訳だが、それは間違つてゐた。ユーザーはユーザーらしく、素材を賢く利用すべきなのだ。もちろん、素材そのものを増やす作業も我々に任されてゐるのは言ふまでもないことだ。

概念的な補足

ここで言はうとしてゐるのは、現状のシステムに手を付けずに済む形でキーワードシステム自体から分類機能を分離しようといふことだ。キーワードは、世のあらゆる言葉と同じで、秩序を持たない。万人が納得する秩序といふものが存在しない以上、システム側でどんな方法を採つても必ず無理が生じる。だからキーワードはただあるだけにしておいて、分類の必要を感じる人間がその必要に応じてキーワードをピックアップすればよい。
必要性への価値観は人それぞれだから、分類を必要だと思つた妖精さんがさうでない人に「お前らがきちんと分類しないせゐでオレ達が苦労するんだ」と言つても全く無意味なのです。

以上、今回とは異なる問題について示した見解であるが、「はてなダイアリーキーワード」の捉へ方に関する認識が今も私にとつて変つてゐないため、今回の様な問題にもそのまま当て嵌めて考へることが可能だと判断したので長々と引用した。主な論点は「概念的な補足」以下に絞られてゐる。これを今回の議論に即した形で改めて論旨をまとめるならば、以下の様になるだらう。

  • (技術的な意味に限らず、ルールや運用面までも含む意味での)システムの整備では秩序を保証できない。
  • 「秩序あるキーワード空間」なるものの具体像については誰も(はてなですら)示してゐない。
  • ユーザー全員がキーワードに秩序を求めてゐるといふ事実はない。少なくとも私には想定できない。
  • 自分の日記内でキーワードをどう利用するかはユーザーの手にほぼ完全に委ねられてゐる。上記議論の頃に比べれば「自分の日記内でキーワードをどう利用するか」についてのシステム側からのフォローは随分充実してゐる。それらを上手く利用すれば多くの問題は回避できるはずだ。

続いて「ゴミ」といふ考へ方について。「通勤」キーワードを巡つてid:yms-zun:20031030で示した見解。

大前提として,規約に抵触しないキーワードはすべて存在してよいと思ふ。その上で,やはり削除した方がよいと思はれるキーワードは確かに存在する。これを判断するには,いくつかのステップがあるのではないか。それを以下に列挙したい。

  1. 利用規約に反したキーワード
  2. ヘルプのガイドラインにある定義から外れたキーワード
  3. 英数字や平仮名二文字などのキーワードで,なほかつほとんどがミスヒットであるもの
  4. 同一のものを指す別称,または別のものを指す同一の言葉
  5. その他,一般的な普通名

上にあるものほど,基準はわかりやすい。下二つとなると,どちらが上かわからない。
まづ,全ユーザーが等しく受け入れるべきなのは,2.までだらう。

反射的に「規約に反してないからといつて」云々と言はないで頂きたい。まして少年犯罪の例へなど持ち出さないでほしい。犯罪は犯罪であり,利用規約に含まれる範囲の話だ。まつたく異なる次元の話を例へとして持ち出すと,そちらの方を信じ込んでしまふのが人の性なので,自分は例へ話は好まない。

明文化されてゐない「美意識」なるものは人によつて千差万別だ。自分がをかしいと思つても,皆がさう思ふとは限らない。
(略)
自分の美意識が世間のそれとピッタリ一致するなんてあり得ない。

誤解のない様に改めて付け加へておく。自分は,どんなキーワードも削除すべきでないとは言つてゐない。誰もがゴミと認めるキーワードであれば,削除されて当然だと思ふ。しかし,それを判定するのは特定個人の価値観によるものでも,世間の美意識によるものでもないと申し上げたい。キーワードに関はつた個人個人の価値観のなかで,一つづつ検討されるべき問題なのだ。

こちらは問題の質が今回と同じなので、纏め直す必要を感じない。名詞縛りがなくなつた今では、さらに条件は緩くなつてゐるはずだ。ヘルプのガイドラインも相当に緩まつた。
譬へ話についてであるが、少年犯罪はともかく、不要と思はれるキーワードを「ゴミ」と譬へることにすら私は賛成しない。上記の議論のなかでこれについて書く機会がなかつたので、今ここで補足しておく。といふか、その前日に登録された瞬間からゴミと決まったキーワードなどありませんと書いたらそこだけ一人歩きしてしまつた。要は、反射的に「これはゴミだろ」と思つた瞬間、それはなんとしても捨てなくてはならない対象としてしか認識されなくなるといふことに対して私は反撥してゐるのだ。


上記の様なことはmittyさんの様な方に対しては釈迦に説法以外の何物でもなく、かうしてくどくど繰り返すこと自体が失礼にあたるとさへ思ひます。すみませんしつこくて。
ただ、これだけ各ユーザーががキーワードを取捨選択する仕組が整つた後でさへ、理想的な「キーワード空間の秩序」とやらを求めるのは何のためなのか、それが私には見えない。mittyさんは秩序の破壊者ではないし「オレ秩序」を振り回すやうな方でないと思つてゐます。それでもなほ求めて止まない「キーワード空間の秩序」とは一体どの様なものなのか。
今までに提出された「はてなダイアリー評議会」の議題が末節に拘つたやうなものばかりなのは何故か、言ひ換へれば何故はてながその様な議題の選び方をしてゐるのか、そして評議会が発動されるまでの腰が重い理由は何故か。人によつては「こんなことだからはてなはダメなんだ」といふ結論に至るでせうが、私は違ひます。これは盲目的なはてなへの追従ではありません。「はてなダイアリーキーワードとはどういふ性質のものか」に対する私の見解がある程度までは正しいことの証左だと思つてゐます。
その観点に立つてみれば、ユーザーが自分の日記内でキーワードリンクを完全にコントロールすることに徹すればよいといふ考へ方を「クサイモノニフタ」と表現されることについて、甚だ心外であると言はざるを得ません。