■ [GP][2004][france]総括
今回のおさらい。最初に個人的に一番気になったポイント。
ミシュランタイヤの危機?
id:roverさんの記事*1を拝読して思いをなお強くしたことだけど、今回のフランスGPで予想外の出来事があったとすれば、それはフェラーリの奇策でもホンダの信頼性不足でもなく、ミシュランタイヤのパフォーマンスだったのではないか。
改めて予選を見返せば、マイケルは別としてミシュラン勢のパフォーマンスは軒並み悪くないどころか、極めて良かった。トヨタの走りもスムーズだったし、マクラーレンやウィリアムズの走りを見てもそれは明らか。気温が低い状態ではブリヂストンに対してひけをとるものではなかった。
にも関らず、気温の上がった決勝では駄目駄目。「暑ければミシュラン有利」という定説はみごとに覆されてしまった。最もタイヤに優しいシャシーと称されるルノーの二台に等しくブリスターが発生したのが象徴的だったが、バトンのペースなども考えると、バリチェッロが予選でもっと上位を取れていればアロンソを抜いて二位表彰台に上がっていただろうと思わされる。アクシデント絡みとはいえアメリカGPでの深刻なタイヤバーストがミシュランユーザーに起きたこともあり*2、パドックでもミシュランに対する不信感が広まりつつあるのかもしれない。
モノの良し悪しというより読みの当り外れがネックになっている気もするし、そうなるとBS+フェラーリほどの密接な関係を他のチームがMiやBSと築くことができるかというのがそもそもの問題ではあると思う。
これから暑い季節に入っていく中で、ミシュランが本来の速さを取り戻せるかどうか。フェラーリ以外の全てのチームの活躍が、ここにかかってくるのではないだろうか。地元GPでミシュランの前に積まれた課題は、決して小さくない。
ホンダの信頼性不足
こうなるともう、琢磨の運転がどうこうでないことは明かだろう。たった十六周の扱いの差でトラブルが出るなら、バトンと琢磨の運転スタイルに如何な違いがあれ壊れるエンジンが悪い。BAR首脳陣もホンダに苛立ちを見せ始めている。これが不協和音となってチームの空中分解に至らないためにも、ホンダには頑張ってもらうしかない。イギリス人って自分達の責任がどうであれ、仕事相手の働きが悪いことに関して容赦しないから。
フェラーリの強さ、ルノーのミス
ピット戦略で出抜いて勝った、典型的な頭脳プレイ。またもマイケルはコース上ではなくピットロードでライバルを蹴散らした。これをして守りの走りだったという批判もあるが、そうだろうか? どこの世界に1'15.377のファステストラップを叩き出す「守りの走り」があるというのか。
実のところ、四回ストップという作戦が勝利に寄与したかどうかは疑わしい。どちらかというと一発芸のようなものだったとさえ言える。二回目のピットインを終えてマイケルがトップに立ち、ブラウンが四回ストップ作戦をマイケルに伝えたときには既に勝敗は決まっていたのだ。アロンソは「フェラーリの作戦が理解できなかった」と言うが、問題はそんなところにはなかった。むしろマイケルが二回目のピットインに入った後の数周、タイヤにブリスターがあってスパートがかけられなかったにも関らず当初のスケジュールを崩さなかったルノーの作戦の方がよほど理解できない。フェラーリピットが動いたときに、ルノーも動きを合せておくべきだった。そうすれば勝てたというものでもないが、勝とうという意志はそういうところに現れるものだと思う。ルノーとフェラーリが逆の立場なら、きっとフェラーリはそういう動きをしたはずだ。
最後の逆転劇は、トゥルーリがもう終った気でいたのがすべての原因。ヤーノはチームに大目玉を喰らったそうだが、まあ仕方あるまい。
その他
マクラーレンはまあぼちぼち。むしろウィリアムズの空力モディファイの方が気になった。ペギラがチャンドラーになったくらいでは済まされない様な後付けパーツの増加が痛々しい。それでもモントヤは二回のスピン*3、ジェネの走りもパッとせず。今回は金曜日がほぼ雨で潰れたという事情はあるにせよ、ウィリアムズはセットアップが決まるまでに要する時間をもっと短くしないと、後半マクラーレンに逆転されないとも限らない気がする。あと、はやくジェネの代りを見つけた方がいい。
トヨタはミシュランに振り回されたんだとは思うけど、予選の速さを決勝でも保てないとね。ザウバーは、何かやってましたか? みたいな。遅いマシンをゆっくり走らせる作戦に何か意味はあるのか。ましてピットインの回数を減らすことにメリットのほとんどないマニクールで。「他と作戦を変えること」が目的化してしまった様で、本末顛倒だった。