大和但馬屋日記

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2004-05-18

[]第三ドライバーに纏わる話

ここ数日、金曜日(モナコでは木曜日)のフリー走行に出走できる第三ドライバーを巡る話が目に付くようになった。

一つは、BARの第三ドライバーであるアンソニー・デビッドソンのジレンマ。彼は絶好調のBARのマシンを駆って、金曜のセッションでしばしばトップタイムを叩き出す。他チームが本気のアタックを行っていない可能性を考慮しても、出そうと思えば誰でも出せるというものではないから、当然それなりに話題と注目を集めている。アンソニーとしてはチーム内に向けて自分こそ正ドライバーに相応しいと、そして他チームに向けても自分が有望な才能であると、全力でアピールするチャンスなわけだ。そしてレースでもBARは言うまでもなく好調で、ウィリアムズを凌いでコンストラクターズポイントで第三位につけている。

さて、金曜日に第三ドライバーを走らせることのできるチームは昨年のランキングの下から六チームまでということになっている。仮に来年も同じレギュレーションが適用されると、BARはその対象から外れる可能性が今のところ極めて高い。デビッドソンにしてみれば、チームが好調すぎると来年の自分の立場がなくなるかもしれないとの危惧があるというのだ。

しかしこれは杞憂というか、如何にもメディアが作り出した心配事の様に思える。別にこのあとBARが失速するというつもりはなくて、このままBARがランキング四位以上でシーズンを終えたとしても(気の早い話だ)、デビッドソンがテストであのパフォーマンスを続けていればどこかから声の一つくらい掛るだろうし、もしかしたらBARのレギュラーシートを奪える可能性だってあるわけだ*1。まあこんな話が出てくるくらいBARの調子の良さがどこでも話題になっているということなのだろう。

第三ドライバーの話でもう一つ。今週のモナコGPの際に、幹部ドライバー*2の呼掛けでGPDAの会合が開かれるらしい。そこでどうやら、現状の第三ドライバーの出走権に関してFIAに対する提言がまとめられるとのこと。

要するにこれもBARに絡んだ話で、「あんなに速いのに第三ドライバーまで使えるなんてズルいだろ」という不満が一部の、というかどこかのマクラーレンチームにあるらしい、と。まあ気持ちはわからんでもない。マクラーレンは今どのチームよりも一周でも多くテストをしたいお年頃だろう。しかし、気持ちはわからんでもないのだが、今年BARの調子がいいのはBAR自身の努力の賜物だし、マクラーレンの調子が悪いのはべつにBARのせいではない。昨年だってルノーが当初不利といわれた「金曜午前プライベートテスト組*3」に名乗りを上げ、そのシステムを最大限に利用してレースで好成績を収めたという例がある。BARBARとしてうまくやっている、それだけのことだ。

個人的に、突出した何かを押え込む方向での改革というのはF1をつまらなくするんではないかと思っている。もちろん程度問題ではあるが、周囲から妬まれ憎まれ足を引っ張られる程に強くなるということは、つまり成功するということに他ならない。どんなチームでも、やはり成功者を目指してほしいものだ。

それにしても、BARが台風の目というのは本当だな。

*1:あくまで可能性の話

*2トゥルーリ、ウェバー、M・シューマッハー

*3:希望チームは各GPごとに一時間の自由なテストができる代りに、GP期間以外のプライベートテストを禁止するというもの