大和但馬屋日記

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お肌の触れ合ひ

ANIMAXガンダムF91。見てゐて気になるといふか、よく目に留まるのは肉体のぶつかりあひの描写が妙に多いこと。逃げ惑ふ人がぶつかりあひ、爆風で友人は叩きつけられ、オヤジは重力に引かれて転げ落ちさうになり、立ち上がつた人の頭が後の人の顎にぶつかり、母はスクーターの車輪を障碍物にとられて転倒し、モビルスーツ同士は接触回線で会話をし、シーブックとセシリーは宇宙空間で抱擁しあう。細かいところでも立つたりぶら下がつたり足をとられたりといふ描写が常にどこかでされてゐる。最大の敵であるセシリーの父は鉄仮面で外界と肉体を断絶してゐるのも象徴的だ。
きつと偶然ではなく、細心の注意で肉感的な描写を配置してゐるであらうことは、接触回線のことを台詞の中で「お肌の触れ合ひ通信」と表現してゐるところからも明らかだ。アニメでは、わざわざ描かなければ人が勝手に転んだりはしないのだ。
富野監督のことだから、どこかでこれについてコメントしてゐる可能性は大いにあるけれど、とりあへず私は知らない。テーマとしてはなかなかのものだと思ふし、さう気付いた目で見ればF91は良い作品だと思つた。