Xbox360用横スクロールシューティング、「赤い刀 真」。まことと読みたい気持ちをグッと堪へる。
アーケード版「赤い刀」は、正直どこが面白いのかさつぱりですわといふ感想しかなくて、たぶん五回も遊んでない。随つて、箱○版にも殆ど興味らしい興味はなかつたんだけど、少し前に配信された体験版を遊んでみたら思つたよりも好感触だつた。面構成はそのままにルールを弄つてアレンジ版に仕立てる手法はいつものケイブらしさといへばさうなのだらう。それにしても、これは、いつもと違ふなと思つた。で、先週発売になつたので買つてきた。
たぶんケイブのゲームとしては初めてなんぢやないかな、ボム以外で「一発大逆転の威力を備へた攻撃手段」をシステムに採用したのは。敵を倒して得られるアイテムが四種類もあつて、自機の状態によつてそのアイテムの種類をコントロールしなくてはならないのだけど、その肝となるのがアーケードには存在しない「鋼」アイテムと「刀」アイテム。敵を倒すと「鋼」が出る。「鋼」を山ほどストックしてから、それを射出して敵に当てると「刀」に変る。この「刀」を射出するともの凄い攻撃力を発揮して、ボスの体力をゴリゴリ削つてくれる。この、「鋼」と「刀」の、アイテムを敵とやりとりする感じが絶妙に面白い。何か近い感覚は、と考へたら「ティンクルスタースプライツ」を思ひ出したが何か違ふ。ともあれ、この「敵に刀を全力で叩き込む」といふ快感は今までのケイブのゲームにはなかつたのではないか。どちらかといふと「弾幕を抜けながらジリジリと炙る」あるいは「出現パターンを覚えて敵に密着して捌く」といふのがケイブ流だと思ふから。
いつもの二種類のショットの撃ち分けと自機の状態の変化等、この辺はいつものケイブ的ややこしさだけど、そのややこしさに見合つた仕組みになつてゐる。この「刀」アイテムの登場でもつて初めて「赤い刀」は完成したのだと思ふ。アーケード版のモードも収録されてゐるが、別にそちらはどうでもいい。
この「赤い刀 真」をもつて、ケイブはしばらくシューティングゲームのリリースを休むやうだが、その区切りとして面白いゲームを出してくれたのは、良かつたと思ふ。
ただ、これ、パッケージとしては高価すぎるのよね。昨今のシューティングはサントラCDやDVDなんかを付けて単価を上げて売るのが当り前になつてしまつてゐる。さうしないとペイできないほど販売数の見込みの上限が小さいといふ現実は、いろいろ悲しくなるね。安価にしたつて誰も買はないんだからね。
涼宮ハルヒの驚愕
読んだ。読んだよ。うーん。
前巻「分裂」と今回の「驚愕」が前後編であつて、その間に四年もの間隔が空いてしまつた事情はよく分らない。憶測ならいくらでもできる。あとがきにもゴニョゴニョと書かれてはゐるが、それは韜晦だらう。本編の筆力と同じ手で書いたあのボンクラなあとがきが真実であるものか。
まあ、真実はさておき、後編であるところの「驚愕」がさらに上下巻の分量となつたことに何らかの事情は見え隠れしてゐるのだらう。 「分裂」の時点でトリッキーな枠組の描写を始めてしまひ、そこで作つた枠組を用ゐて話を収めるには、ともかくもこの分量が必要だつたのだ。それは解る。
で、その枠組に負けちやつたんだらうなあ。感想としてあるのは、まさしく「枠組を見た」だけだつた。その枠組の中にあるものが、ちよつと、あまりにもスカスカすぎやしないかと思つたのだ。本三冊分の字数を費して、四年(「分裂」の構想期間除く)もの期間をかけてちよつとこれはないな、何を入れようか困つた果てにかうなつたのかなあと。
「ハルヒ」自体、それほど打率が高いシリーズではないかもしれない、それはさうだ。一巻であるところの「憂鬱」と、こと四巻目の「消失」が面白いから、それを読むために残りも読まなくては損だ、物語的にはさういふものだ。あとは各話ごとの作者の小技を楽しんでゐればいい。今回は大技をかけようとして、間違つて骨折つちやつたんだらうなあ。
メディア展開の方は俺は全く見てゐないから、メインキャストが誰かは知つてゐても、例へば地の文が杉田智和の声で聞えたりはしない。あまりに大きくなりすぎた「ハルヒ」の名前に呑まれた末がかうだとは思ひたくないので、また技の効いた文章で楽しませてくれれば、それでいいかな。