大和但馬屋日記

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ル・マン決勝

yms-zun2008-06-15

ぎやあああトップの八号車が!! ガレージに引込んでしまつた。どした? またアウディに持つてかれるのか?
ん? 九号車黒旗?
十六号車ペスカロロクラッシュ。童夢のライバルがポロポロこぼれていくぞ。
でも八号車も九号車もまだトップ走つてるのか。八号事の築いたマージンが如何に大きかつたか。いや、オフィシャルのリザルトが更新されなくなつてるだけだ、八号車は走つてない。やつと動いた。何周遅れかしら。トップはアウディ二号車。
主にチャットウインドウ付の海外のストリーミンクサイトで観戦してゐるのだが、映像もいいけど横に流れる雑談を眺めるのも面白い。「ゲハでやれ!」と言ひたくなる話題とか、好きな歴代ル・マンカーを挙げたりとか、F1とどちらが好きかでいがみあつたりとか。"le mans>>>>>>f1"とか"F1>Le Mans"とか言ひ合つてるのを見るとどこも変らんなといふか、不等号の数で競ふ風習まで同じかと笑つた。どこが発祥か知らんけど。
プジョー八号車、二十一番手まで落ちたのに十番手まで戻つてきたなあ。童夢は暗くなるまでに抜かれさうだ。現地午後八時半の上位十台。

01 7 PEUGEOT 908 HDI FAP
02 9 PEUGEOT 908 HDI FAP + 0'21"273
03 2 AUDI R10 TDI + 0'31"971
04 1 AUDI R10 TDI + 1 lap(s)
05 3 AUDI R10 TDI + 1 lap(s)
06 5 COURAGE ORECA JUDD + 3 lap(s)
07 17 PESCAROLO JUDD + 4 lap(s)
08 11 DOME JUDD S102 + 4 lap(s)
09 6 COURAGE ORECA JUDD + 4 lap(s)
10 8 PEUGEOT 908 HDI FAP + 5 lap(s)

racing-live.comのタイミングモニタは「今何周目か」が分らなくて使へないな。でも公式のが死んだままだから仕方ない。この辺、「年に一度の世界最大の草レース」の限界だなあ。
暗くなつてきたな。眠くなつてきたな。
童夢は燃費がよくないのかな。目下のライバルであるペスカロロやオレカに比べてピットインが一回多い。その差がそのまま順位になつてる感じ。まあ、ピットイン回数の差がどんどん開いてる訣ぢやないから燃費云々は杞憂だと思ふけど。
予想通り、八号車が童夢を抜いた。日没後だけど空はまだ少し明るい。レース中に二十秒切るか‥‥
寝て起きたら童夢終了してた。走行は続いてるけど、レースからは脱落よね。
雨。荒れるか? 五号車が最終シケイン立上りでスピン。後続車がうまく避けて行くので何事もなかつた。かういふのが増えそうだな。
ライブタイミング見て「何でアストンマーチンだけカーナンバーが三桁なんだろ」と思つてたら実況スレに答が。さうか、アストンマーチンだからか。007。
うわ、童夢がコースアウトしてる。
終盤、童夢がクラッシュ。ストレートの二つ目のシケインの立上りかな? フロントカウルが吹飛んだけどまだ走れさう。
アウディの一号車がギアボックストラブルでガレージに。
コメンタリが何だかF1の噂話をして内容が気になる。けどほとんど何言つてるか分らん。ていふか英語ですらない。キミの去就に関する内容であることは間違ひなさげだが。
残り二時間半。五番手まで追上げたプジョー八号車、ガレージで冷却系のチェック。

1 2 Audi Sport North America LMP1 341
2 7 Team Peugeot Total LMP1 340 1 Lap
3 9 Peugeot Sport Total LMP1 338 3 Laps
4 3 Audi Sport Team Joest LMP1 338 +1:12.813
5 8 Team Peugeot Total LMP1 329 12 Laps
6 1 Audi Sport North America LMP1 327 14 Laps
7 17 Pescarolo Sport LMP1 325 16 Laps
8 5 Team Oreca Matmut LMP1 319 22 Laps
9 34 Van Merksteijn Motorsport LMP1 317 24 Laps
10 10 Charouz Racing System LMP1 315 26 Laps

やつぱりアウディの勝ちで決るのか。時間で言へば、まだF1の決勝よりも長い時間が残つてるから何が起るか分らないけど。
八号車、アルナージュでタイヤバリアに刺さつた。前から突込んだのに、ピットではリアウイングを交換。カウルまで開けたのはついでに冷却対策でもしたんだろか。
うああ、先頭のアウディ二号車が三コーナーで接触。また荒れて来たなあ。でもアウディにはダメージなしでピットもスルー。コースの南半分は雨が本降り、北側はドライ。大変だな。
アウディ優勝おめでたう〜いやあ、凄いね、格好いいね。最高。
ワシの中にあるストーリーはこんな感じ。ここ二十年ほどのル・マンの歴史はバブル期と崩壊期の繰返しなんだな。
ポルシェ956/962cの一強時代があつて、その流れで丁度日本でのバブルの絶頂期にマツダが優勝したりF1テクノロジー流入があつたりで技術的にもイベント的にも盛上りまくつたのが九十年代初頭。TWRジャガーザウバーメルセデス、そしてジャン・トッド率ゐるプジョー。メーカーワークス百花繚乱。思ひ出すだけで泣きさうだ。しかしそれが極端な参戦コスト増を招き、ワークス勢がごつそり撤退。スポーツカー選手権までなくなつて、金のかかるレースはF1だけになつた。
そんな訣で九十年代中頃は純然たるスポーツカーの時代になつて、マクラーレンF1やフェラーリ、ポルシェ等の「普通つぽい車」だけの、絵面的には地味なレースになつた。そこへトヨタが乗込んできて、「これのどこがスポーツカーか」と呆れる様な姿のTS020を持つてきた。レギュレーションの穴を突いたそのやり方に真向から挑んできたのがメルセデス。またバブル。丁度メルセデスはF1でも上り調子だつたから、最強ブランドを守りたかつたのだらう。結果、空力を攻めすぎたメルセデスは宙を舞ひ、一九五五年の惨事を繰返しさうになつて撤退。トヨタも結局、かけた金に見合ふ結果を残せないままF1に「逃げた」。逃げた先でもゲフンゲフン。
またもペンペン草一本残らない状況になつた二十一世紀、唯一ル・マンを支へたワークスメーカーがアウディ。しかし、プライベーターばかりの中で一人勝ちを続けても空しいばかり。そこでアウディは独自のテーマを自分で用意した。それがディーゼル化への挑戦だつた。
環境問題の意識が世界的に高まると、そのテーマが無視できなくなつてくる。で、最初に噛みついたのがプジョー。十数年前に我が物としたル・マン王者の栄華を再び。ル・マンはフランスのレースだしね。F1で晒した醜態も返上したいだらう。
でも、アウディに勝てなかつたそれが昨年。今年こそはと、史上最速のマシンに仕上げてリベンジしてきた。三分十八秒て。喩へるならベン・ジョンソンみたいなもんだ。合法ドーピングかよ。
でもね、ル・マンは耐久レースなんだよね。スプリントレースぢやない。アウディの連中は予選からレースの序盤まで快調に飛ばしまくるプジョーを見てどう思つてただらう。焦りもあつたと思ふけど、「でもここはル・マンだからねえ」と醒めた目で見てたのかもしれない。結果論だけど、やつぱりさう思へる。
改めてリザルト表を眺めてみた。

Pos Team Cls Laps Gap BestLap Stop
1 2 Audi Sport North America LMP1 381 3:24.152 34
2 7 Team Peugeot Total LMP1 381 4:31.094 3:21.438 37
3 9 Peugeot Sport Total LMP1 379 2 Laps 3:20.600 39
4 3 Audi Sport Team Joest LMP1 374 7 Laps 3:23.939 34
5 8 Team Peugeot Total LMP1 368 13 Laps 3:19.394 39
6 1 Audi Sport North America LMP1 367 14 Laps 3:25.166 35

注目すべきはアウデイとプジョーの各車のベストラップと、ピットストップの回数。プジョーの三台はアウディの三台よりも明らかに速い。しかし、ピットの回数(表の右端)はアウディの方が断然少ない。どちらの数字もてれこになつてない。結果として、誰よりも速かつたプジョーは、一番高い処に上れなかつた。
速いマシンではなく、強いチームが勝つ。今年のル・マンはまたそれを証明した。コンストラクターとして速さだけを求めた童夢は、何も得られなかった。
さて、来年以降はどうなるかね。またぞろ超スプリント化に向ふのか、規制が厳しくなるのか。ディーゼル化やハイブリッド化は時代の流れとして止められないから、ガソリンに拘つても仕方がない。しかし新技術の投入にはメーカーの潤沢な開発資金がどうしても必要だ。今年は予選でローラマツダが飛んだだけでなく、各地のル・マン選手権シリーズでも歪な空力バランスのためにマシンが飛びまくつてゐるさうだ。十年前と同じスプリント化の陥穽に、既に落ちてゐるらしい。なんだか、また節目の時期が巡つてきた様に感じる。
F1と違つて年に一度のお祭りだからこそ、シーズン単位でコテコテに煮詰るのとは異る大きな歴史の流れで見えるものがある。これだからル・マンは面白い。年に一度で毎年条件も変るから、ドライバーの才能なんか結果に影響しない。勿論才能のないドライバーなんかに結果は残せないといふ大前提があつての話。彼らは皆最高の仕事をしたよ。
これがモータースポーツだ。
以上は優勝争ひに血道をあげつつ参戦と撤退を繰返すメーカーワークス史観。ル・マンにはもう一つ、何十年も変らず楽しみながら挑戦を続けるプライベーター達の物語があつて、そつちがむしろ本流。

  • 2008年06月16日 shimaken-op おもしろい!