大和但馬屋日記

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夏時間反對

「ろこどる」BD版のオーディオコメンタリーを聞いてゐると、當作は深夜アニメとしては珍しいことに本編映像がほぼ完成した状態でアフレコが行はれたといふ話があつた。面白いのは主演の若手聲優さん達が「完成した繪に口パクを合はせるのが難しかつた」と話してゐること。普段の「線撮」だと自分の話す臺詞はキャラ名とタイミングを示す色の線で表示されるからそこから外さなければよいが、完成映像だとキャラの口の芝居を見て合はせねばならぬから、慣れてゐないと難しいといふことだつた。たしかに、繪によつては口が映つてゐないこともあらうし、次カットに臺詞をこぼす場合も難しからう。繪の制作體制の問題が聲優の演技にまで影響を與へてしまふこともあるのだな。
話變って。


こんなことを言ふ人が居る。きつと關東生れの關東育ちで、日本ならどこに居ても日の出と日没が同じタイミングで起ると思つてゐるのだらうな。何なら、自分の住む土地の太陽の南中時刻が正午ではないことにも氣付いてゐないだらう。時計が同じ時刻を指してゐる時、太陽の位置は北海道と九州や沖縄では一時間分ほどの差が生じる。東京で太陽が南中するのは昼前、十一時四十五分にもならない時刻である。西日本から東京に出てきた人ならば、何となくにでも「日の暮れるのが早いな」と感じたことがある筈だ。
さういつた地域差は日本だから前後合せて高々一時間程度に収まつてゐるけれども、標準時線が國土の片隅に偏つてゐたり國外にある様な地域ではより影響が大きい。スペインなどは食事に時間をかけ、囘数も多くとり、昼寝(シエスタ)の時間まであることで知られてゐるが、それは何も當地の人がノンビリ屋だからではなくて、スペインの標準時線が遠く東のドイツにあり、それ故に時刻が通常の感覺よりも二時間も前倒しで動いてゐることに適應してさうなつたのだ。それに加へて夏時間もあるから、夏のスペインでは太陽は午後三時に南中し、夜の十時まで沈まない。勿論その分朝も遅い。冬のスペインは朝八時を迎へてもまだ夜が明けきらないさうだ。太陽と時刻の不一致によるそんなリズムに合せるから彼の國では獨得の生活習慣を獲得するに到つた訣だ。
東京人の時間感覺、それもインドアな職種で凡そ太陽がどこにあらうと大して關係なささうな人の氣分に合せて全國津津浦浦の人々の生活リズムまで好きに弄らうなどと、全く東京の人といふのは傲漫なものの考へ方をするものだ。夏時間を唱へる者に一體ろくな奴は居ない。スペインでは生産性を高める爲に前倒しすぎる時制を改めようといふ動きがあるらしい。今に及んで日本が時制を前倒しにする必要などないのだ。
サマータイムを有難がるのはたぶん「歐米諸國がやつてるから」だらうし、その歐米諸國でも賛否が分れてゐるし、そも導入理由が「戰時の光熱リソースの削減」みたいなとこにあつたりするので今本當に有效かといふと疑問符がつく。中國と仕事をしてゐる人などは時間が合ふので多少は便利かもしれないが、それなら通年でなくては意味がないし、まして一時間ずらしたからといつて歐州とも米國とも時差が吸收できるわけもない。本當に意味がない。