大和但馬屋日記

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言霊つてあるよね

前回の日記を書いた翌朝のことさ。少し余裕をもつて家を出ようとしたら、必ずあるべき尻ポケットの中に鍵がない。慌てて家中を引くり返して探してみたが、やつぱりない。この時点で遅刻は確定、ともかくもマンションの管理会社が開くのを待つて事態を収拾しなくては。
九時になつた。電話。よりによつて月に一度の平日の休業日。何やそれ。施錠せずに家を空ける訣にもいかない、何故なら鍵がないといふことは、ドアの外に挿し放しにして誰かに持つて行かれた可能性すら疑はねばならないからだ。どうしよう。
尻ポケットを外から叩いても、そこには何も入つてゐない。叩いてみるたび鍵が増えたりもしない。そもそもビスケットの数が叩くたびに増えるのは割れるからだらう。などと苛々しながら無意識に手を尻ポケットに突込まうとした。すると、何故かポケットに手が入らないではないか。
???
よく見ると、ポケットの袋部分がズボンの中でまくれ上つて、ベルトと身体の間に挟まつてゐる。そしてその中に、散々探し回つてゐたものが確りと在つた。どつと力が抜けた。
さて、出勤すべき時間まであと四十分。一時間二十分は必要な道程で絶対に間に合ふ訣がない。ともかくも地下鉄に乗つて神田へ。そしてJRに乗換へる段になつて、気が付いた。あれ? ひよつとして間に合ふかも?
券売機で切符を買つて東京駅へ。そして、一番早く出る「のぞみ」に飛び乗る。出向先は新横浜の駅近くなのだ。
結果、僅か五分の遅刻で事無きを得た。まつたく、前の晩に「新幹線を使ひたいくらゐだ」なんて書いたばつかりに。