大和但馬屋日記

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ニード・フォー・スピード:プロストリート

NFS」シリーズの何作目かは知らない。個人的には序盤で積んだ「NFSカーボン」に次ぐ二本目。サターンの「オーバドライビンGT-R」はカウントしない方がいいよな?
シリーズのファンの今作についての感想をまとめると「NFSシリーズの良さが無くなつた」とのことで頗る評判が良くない様だ。もともと一般車も居る公道でのレースが売りで、パトカーとのカーチェイスも特徴だつた。現世代機での「モストウォンテッド」や「カーボン」は箱庭カーチェイスゲームだつたこともあり、確かにさうした路線とは全く異なる。
この「プロストリート」は、前作までの警察との対立や走り屋の勢力抗争といつたワルッぽい世界設定をバッサリ捨てて、架空のレースイベントにデビューして名を上げていくストリートあがりのレーサーの物語をゲームの動機付けとして仕立ててゐる。どちらかといふと「PGR」シリーズに近い。
で、名前を出したからには比べてしまふが、その雰囲気の作り方が「PGR」に比べて圧倒的に巧い。大袈裟に言ふならば、ゲーム史上初めて「レースイベントのゲーム化」に成功したのではないかとすら思へる。
ゲームの流れとして普通にディーラーやガレージ等があり、ここは普通のゲームと変らない。レースに出るにはまづ参加するイベントを選ぶ。一つのイベントには数種類のレースがワンセットになつてをり、レースで稼いだポイントの合計が基準に達するとイベントに勝つたことになり、先に進むことができる。ゲームの最終目的は、この世界でのカリスマ的レーサーである「RYO WATANABE」を倒すことらしい。
で、任意のイベントに参加すると、これが素晴しい。機能的にはただのメニュー画面なのだが、背景にレースイベントの中央会場の様子を映してゐる。出走するマシンが、当然プレイヤーの乗る車も含めて展示され、その周りにモブが集まり、奥のステージでDJが常に陽気なアナウンスをまくしたて、モデルの姉ちやんが闊歩する。どこにでもある祭りの風景がありのままに描かれてゐる。ストーリーの進行によつて、RYOが会場にやつて来てプレイヤーのマシンを横目で睨むなんてイベントも挿入される。心憎い演出だ。
レース中も、DJが常に実況を続けてゐる。これがまた随分と凝つてゐて、ちやんとコース各所に設置されたスピーカーから声が聞えてくる。スピーカーのないところでは当然何も聞えない。喋る内容もレース展開に合せたものだし、驚くべきことにプレイヤーの乗る車種やメーカーに合せたことまで喋る。イベントにもいくつかのシリーズがあり、そのシリーズ毎にDJも別の人になるから、一体どれだけの音声パターンがあるのかと気が遠くなるほどだ。
一度でもサーキットに足を運んでレースイベントを観たことがあるなら、このゲームがその臨場感をどれほど高いレベルで表現してゐるかが分る筈だ。ワシは、この雰囲気だけでもこのゲームに至上の価値を認める。大好きだ。
だから、以下は蛇足。

  • グラフィックのクオリティは、車と背景のトータルバランスで見れば最高。特に車の質感と空気感が心地良い。暗いところを真黒につぶして「フォトリアル」でござい、などと抜かすゲーム共とは比べるのも馬鹿馬鹿しい。フォトリアルはリアルぢやねえんだよ。
  • 挙動はリアルではないが素直で良い。「PGR」ほど中途半端にリアル寄りでもなく、加減速とライン取りをきちんとすれば速く走れる。
    • ただし、派手にチューンしすぎると簡単に横転するので少しストレスに感じる。
    • 「カーボン」の挙動よりは良くなつてると思ふが、あれはパッドでしか遊んでないのでハンドルだとどうかは分らん。といふか「カーボン」でハンドル使へるのか?
  • 音はそれなり。音質的にとりあへず低音出しとけ、みたいな感じ。
  • 破損の金銭的ペナルティが厳しい。序盤の金の溜り方はレースゲーム内マネーを嫌ふワシには苦痛そのもの。
  • ゲーム内マネーを使はなくてもMSポイントで車やパーツが購入できるといふ仕様は半ば呆れつつも感心した。苦労したくなきや金払へとな。
    • レアな車種はそもそもゲーム内マネーでは買へずMSポイント購入のみ。アイマス商法と変らん。
  • リプレイ再生といふ概念が存在しないのはつくづく残念。レーススタート前のデモ等、カメラワークの出来が素晴しいだけに惜しまれる。

「お祭り感」と実況の片鱗はこの動画で分る。ただ、レースが周回コースでなくスピードチャレンジなのでレース中の実況は残念ながら聞えない。例に挙げといてなんだが、この動画からは臨場感によるこのゲームの魅力が十分の一も伝はつてこない。