大和但馬屋日記

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引越中に読んだものとか

随分と溜め込んだ。

神様家族〈2〉発育少女(桑島由一,MF文庫J) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

悪い意味でアニメやゲームのシナリオみたいだ。刹那的な前後の繋がりだけがあつて、物語全体としては何といふこともない。最後に佐間太郎に課された処罰がこの話の一番の鍵であるはずなのだが、何を失はせるかの取捨選択も巧くないと思つた。何も読後感が残らない。
続きはもういいや。

スペースシャトルの落日-失われた24年間の真実-(松浦晋也,エクスナレッジ) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

一気に読み終へた。この分野に興味を持つた状態で最近の情報をある程度仕入れてゐればそれほど耳新しいことが書かれてゐるとまでは感じられず、どちらかといふと「ふむふむ成程ね」といふ意識で読み進めがちだが、それでもやはり「翼の付いた宇宙船」といふものに対する誘惑(あるいは呪縛)は簡単にが拭ひ去り難いものだとも思つた。
スペースシャトルのオービターが着陸するあの絵面と比べると落下傘による海上への帰還はどうしても技術的に後退した様に(有体にいへば格好悪く)映つてしまふ。そのどうしようもない洗脳状態から目を醒ますためにも、この本が多くの人に読まれて欲しいものだ。

ウェブログの心理学(山下清美/川浦康至/川上善郎/三浦麻子,NTT出版) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

基礎教養として目を通しておいて損はない。控へ目な言ひ方だがこの本はそれが全てであり、そのために読む価値はある。

新宗教と巨大建築(五十嵐太郎,講談社現代新書) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

近世末期以降に勃興した日本の新宗教を題材にし、その教義を具現化したものとして建築を捉へて解説を試みる本。
なかなか面白かつた。関西出身なので幕末期の天理教金光教大本教などがそれほど遠い世界のことでもない割に、ではそれらのことをどのくらゐ知つてゐるかと改めて問はれれば、親類縁者に信者が居ないのでほとんど何も知らないことに気付かされた。精々、奈良で親類の結婚式に出たときに同じ建物で挙式のあつた別の家の新郎新婦が、天理教式に則つて黒い着物を着てゐたのを見た程度か。
本の前半を占める、その天理教の教義と建築に関する部分は読んでゐてある意味興奮した。なんと壮大な構想であり、しかもそれが着々と完成に近づきつつあるといふ。
Google マップで表示させてみた。この中心点が天理教本部で、それを四角く取り囲む様な建物が見える(参考:http://www.mapion.co.jp/c/f?uc=1&grp=all&nl=34/35/53.040&el=135/50/45.659&scl=25000&coco=34/35/53.040,135/50/45.659&icon=star,0,,,,&bid=Mlink)。いつかこれが完成すれば、完全に四角い宗教空間が出来上がるといふのだ。語彙の不足を呪ふしかないが、それにしても面白いではないか。
新興宗教がどの辺りから際物扱ひされなくなり社会的な立場を得られるやうになるものかと考へると、それは概ね教祖が死んで教団が組織的な安定を求めるやうになつた後だらう。それにはやはり数十年といふ時間が必要で、それを乗り越えた新宗教の持つ迫力のやうなものを感じた。

テロルの決算(沢木耕太郎,文春文庫) - 大和但馬屋読書日記 - bookグループ

昭和三十五年に起きた社会党委員長刺殺事件を題材に、実行犯山口二矢と殺された浅沼稲次郎の人生が如何に交はつたかを描くノンフィクション小説大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
二人の人生を描く作者の筆致があまりに真直ぐで、綺麗にまとまり過ぎてゐて、さて「事実は小説より奇なり」といふが本当に奇なるものは事実なりや小説なりやと考へ込んでしまつた。
傑作だと思ふ。