大和但馬屋日記

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昨日の補足

また個人的な興味の話になつてしまひますが,今の私は「昔から続いて今も残るもの」に心を動かされることが多いのです。たぶん万葉集の仕事に携わつた時から芽生えた感情だと思ひます。今でも単発的な歴史上の事件(三国志とか戦国時代とか)にはほとんど興味がありませんが,さうした時代の人たちが今に残したものには心惹かれます。だから,それらの根本にある言葉については無関心でゐられないわけです。

昨日のこの部分について,言葉が足りなくて「万葉時代以外の歴史に興味はない」と受け取られてゐるかもしれないので補足しておきます。
万葉時代のことであつても,たとへば壬申の乱大津皇子暗殺事件や大仏開眼などといつた個個の事件に対しては「さういふことがあつたらしい」以上の感慨は持ち得ません。さうではなくて,それらを記した書物や大仏などの事物,もつと時代が下つて関ヶ原の合戦場や日光東照宮,お台場の砲台跡などの具体的な「もの」が残つてゐること,大津皇子が葬られたといふ山が今も昔も読みは違へど「二上山」であること,うちの田舎の小さな浜に妖怪伝説があつて,江戸時代に「幽鬼の浜」が「雪の浜」に改称されたこと,しかし「ゆきのはま」といふ名前自体は保存されてゐること。さうした諸々が「言葉」によつて今に伝はつてゐること,私はそれを大切にしたいといつてゐるのです。万葉文化が好きだからそれを保存したいといふ話とは違ひます。