大和但馬屋日記

はてなダイアリーからの移行中

読了

神様のパズル(機本伸司,角川春樹事務所,ISBN:4758410038)

うーん,これは。
天才少女と冴えない男子学生が宇宙の創世について考へて,その答へに迫つてしまつてさあ大変な話,なのだが。
同じテーマをクライトンが書けば,どこからが本当でどこからが嘘かの見分けも素人にはつかないやうな迫真のスペクタクルになるのだらう。ただし登場人物はオッサンだらけになる。それが,話の中心に天才少女科学者(ただし内面はオッサン)を据えてしまつたために話全体が嘘臭くなつてしまつた。
そして語り手たる男子学生は話の核心に触れることなく周辺を右往左往するばかり。男子学生の日記といふ形で書かれた文章であるため,読者が最も読みたいことについては描写されずじまひである。最後は「なんだかいろいろあつたけど世の中つて結局かういふもんだよねー」と言ひたげな落ちをつけてゐるが,具体的に何があつたのかを描かなければ単なる牛の首だ。おいおいそこで勝手に話をまとめんなよ,と読みながら思つたことである。読者置いてきぼり。