大和但馬屋日記

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サービスの階梯

あおやぎさんからネタを拝借。

窪山哲雄氏の「ピラミッド理論」が他のサービス業、とりわけゲーム業界にも応用できないかといふ話だが、肝心の理論にあたつたわけでないので、当該日記から連想したことを徒然に認めておく。
件のピラミッド理論は、一つの場に対しては有効だと思ふが、業界全体にそのまま敷衍できるかどうかに疑問がある。例へば、ある一つのゲーム施設の話として考へるのは容易い。しかし業界全体となると、次元の異る話かもしれない。何故さう思ふかといふと、パイの大きさ(あるいは質)が違ひすぎるのではないかと。
ホテルやリゾート施設、あるいはゲームセンターでもよいが、さういふ「場」には、客が集まる必要がある。客にしてみれば、まづは楽しまうといふ意識があつて、そこから(無意識的であれ)加点法なり減点法なりで場の評価をして帰つてゆく。さういふ場合に、ユーザーをつなぎ止めるための方策として、ピラミッド理論は有効なのだらう。
ただ、家庭用を含めたゲーム全般となると、どうだらう。ドラクエRPGを知つた層が、次のステップへ進みたいと、どこまで本気で思つてゐるかどうか。長崎や洞爺のホテルならそこへ行くこと自体にバリューがあるわけで、通りすがりにふらつと入れる場所ではない。一方、ドラクエに始まるRPGバブルはまさに「通りすがり」レベルの話であつて、その先を望む客が多いかといふと、とてもさうは呼べないのではないか。もつとはつきり言へば、「ドラクエ」と「FF」で遊んでゐれば満足といふ客は別にゲームがしたいわけでなく、話題に乗つてゐればそれで良いのではないか。別にさういふ層を否定してゐるのではなくて、誰だつてすべての娯楽にまんべんなくアンテナを向けるのは不可能なのだから、そんなもので良いのだと思ふ。そして、ゲームの方を向いた客に対しては、まだそれなりに色々なレベルのソフトが供給されてゐると思はれるので、その点は心配しなくて良い。業界の抱へる問題は、その供給のためにかかるコストが割に合はなくなつてゐることだらう。
過去十数年間の「ゲームが目新しかつた時期」と「団塊ジュニアに金と暇があつた時期」の幸せな融合によるゲームバブルは、むしろ異常だつたのだと思ふ。熱狂の時期が過ぎて、業界もある程度淘汰されて落ち着いて、なほ需要と供給のバランスが取れる方法を確立できて初めて、業界単位での「ピラミッド理論」の出番が来るのではなからうか。もちろんその方法の確立のためにも有効な理論ではあらうが、業界の方にそれを支へる体力がない、この事の方がよほど深刻だと思ふ。とりあへず、「あのバブルよもう一度」といふ発想を捨てるべきなのだ。社会全体の景気対策と変りませんな。
むしろ、今のアーケード界はピラミッド構造ができつつある段階と言へるのではないか。バトルギア3もさうだが、カードやキーなどによるデータ管理がもはや珍しくなくなり、リピーターから金を捲上げる仕組として上手く機能してゐる。リーズナブルなサービスの方はプライズ物やコインゲームで比較的安定してゐるだらう。両者の客層がそもそも同じでないといふ点は、特に問題ではないと思ふ。
一足先に淘汰の進んだアーケード業界の現状は、昔を知る者には寂しく映るかもしれないが、「さてここからどうしよう」と考へる気になる程度には落着いてきたんぢやないかなあ。もちろん問題は山積みだけど。
論点があちこちに飛んでしまつたが、平にご容赦を。