大和但馬屋日記

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流体力学とかなんとか

ワシも同じスレを見てゐて、次のレスには大笑した口ですが。

そもそもトヨタ流体力学に期待するのが間違い
トヨタが空気読めるのなら、バス待ちのカイゼンより先に
ダウンフォースつけているはずだろ

「空気読める」のトリプルミーニングが最高ですね。てのはともかく。
渋滞の解消には流体力学のような数学的な対処が必要なのではないかと思っておりますなんてのは、見解表明としては最低だと思つた。大体、問題が「渋滞したこと」にあつたと考へてゐる時点でアウトだ。
富士スピードウェイ(FSW)でF1を開催する限り、どこかで渋滞が起きるのは避けられない。これはFSWに限つた話ではない。鈴鹿でやつても同じことだ。一箇所に十数万人の人間が集まるのだから、どこかしらで流れは滞る。
必要なのは、どこで渋滞を起すかといふコントロールだらう。FSWもそこには気を遣ひ、主眼を「地元小山町御殿場市の交通を麻痺させない」といふところに置いたものと思はれる。その方針自体は別に間違つてはゐない。御蔭で、先週末を通して地元の周辺道路はほとんど混乱しなかつたと聞いてゐる。FSWは、自分の責任の及ぶ敷地内に混乱を収めたのだ。そこまではいい。
問題は、その敷地内で果さなくてはならない責任を果しきれなかつたことにある。一部ではスタッフが現場を拗棄したといふ話さへある。
歩道は未舗装の泥道で、バスの通る道は簡易舗装で、雨風の凌げる屋根もほとんどなく、行列整理のスタッフは練度も低ければ数も足りず、観客はおろか現地スタッフの間にすら必要な情報の連絡が行き届かず。何が流体力学か。それ以前の、やるべきことをきちんとやつてゐれば回避できる問題ばかりではないか。如何にも手に負へない自然現象のやうに語るなよ。
敷地内に滞留した膨大な数の観客をどの様に扱ふか、それこそが問はれてゐるのに、それに対する回答は未だ行はれた様子がない。金を返せば済む問題ではなからう。慰謝料を払つても良いくらゐだ。
コミケの運営が上手くいつてゐるのは、コミケスタッフが流体力学的シミュレーションを徹底的に行つてゐるからではない。長年に渡る経験を元に、多少の非常事態に対しても柔軟に対処できる流動性を運営側が持つてゐるからだ。この先何十年掛つたとしても、トヨタの硬直したマニュアル主義的「おもてなし」がそれに匹敵できるとは思へない。
鈴鹿でのF1観戦だつて、楽なことばかりではない。情報に疎い人ほど損をするのは同じで、予選や決勝帰りにバスやタクシーを待つ行列を見れば「他のルートを探せばいいのに」といつも思ふ。でも、行き慣れた人なら快適に鈴鹿から帰るコツをそれぞれ体得してゐる筈だから、初めての人はなんとかさういふ人からノウハウを聞き出して欲しい。ワシも訊かれれば何かしら教へられると思ふ。富士は、たぶん無駄だ。今年の失敗は来年に生かされないだらう。トヨタに人の心があるなら別として。
「渋滞の解消」を目的に何をどう対策しても無駄。それに対する正解は現状「富士でF1をやらないこと」にしかなり得ない。さうではなく、会場内に残つた、否残らざるを得ない人々をどう「おもてなし」するかだらう。金に任せて通路を全部舗装して屋根つけて遊園地を造れば済むといふ話でもないとは思ふが、それだけでもやらないよりはマシな気がする。といふか、彼等にそれ以上を求めても仕方なからう。
あと、百里基地に行つた時にも感じたが、「パーク&ライドシステム」といふのは基本的に「会場から観客を追ひ出す」仕組である。主催者側がさういふ意識でゐる限り、イベントの帰りに待つのは苦痛でしかない。地理的にその仕組を取り入れなければ成立しないイベントなのであれば、そんな場所で行ふべきではない。
予定通りなら来年も日本GPはお預けである。こんなに寂しいことはない。

興行面はともかく、競技としてはどうだつたか

セーフティカーの先導中にチームラジオで「全く前が見えない!! 中止すべきだ!!」と叫ぶドライバーの声が国際映像を通して放映された。その声はよりによつてトヨタヤルノ・トゥルーリのものだつた。

不幸中の幸ひといふか

さすがに現場で人が死んだりしていないから、F1ファンの間でしか話題になっていないけど、このオペレーションの失敗具合というか、課題に対する視線の外れ具合というか、ダメさ加減は、世に数多ある死傷者数百人レベルの大事故と、そう違いは無いんでないかと思うな。

フム。 - ウスイ スウプの日記

全く仰る通りだと思ふ。
FSW側の人はかう言ふだらう。「あの様な天候に見舞はれたのは全く不運だつた」と。たぶん、彼等の意識はここで止つてゐる。好天であれば、かうも準備不足が露見することもなかつただらうと高を括つてゐるに決つてゐる。
ワシはかう思ふ。「あの様な天候の中で、ドライバーと関係者、観客まで含めて一人の死者も出なかつたのは全く幸運なことだつた」。
マスコミを通じて「三十年ぶり」といふフレーズばかりが強調されたが、三十年前の富士のF1レースがなぜその年限りで中止に追ひ込まれたのかをもう一度思ひ出すべきだ。アロンソに怪我がなくてよかつた。マッサとクビサ接触しなくてよかつた。本当に運がよかつた。

  • 2007年10月06日 tetracarbonyl トヨタ F1>必要なのは、どこで渋滞を起すかといふコントロールだらう。FSWもそこには気を遣ひ、主眼を「地元小山町御殿場市の交通を麻痺させない」といふところに置いたものと思はれる。
  • 2007年10月04日 wtnb18