■ [GP][2004][USA]第9戦アメリカGP決勝(6/20)73周 天候:晴(ドライ)
フォーメーションラップ開始直前、モントヤがマシンを飛び出してピットに走る。突然のスペアカーへの乗換え。そんなモントヤを後目に隊列は動き出す。モントヤはスペアカーでピット出口のラインに止まった。
スタート、琢磨は順調、バトンは出遅れた。マイケルが大きく動いて琢磨を抑え、一コーナーでアロンソが琢磨を抜いた。完全に四方からマークされてしまったね。
その一コーナーでクリエンがダ・マッタに追突、スピン。その煽りでマッサ、パンターノ、ブルーニがクラッシュして消えた。ダ・マッタはピットインしてマシンを修復。トラックにはセーフティカーが導入された。
六周目にレースは再開。トップ二台が息詰まる牽制の後オーバルトラックで猛然と加速。マイケルがバリチェッロを抜き去る‥‥コントロールラインの前で!!! ライコネンは琢磨に並びかかるが抜くには至らず。
九周目、アロンソが一コーナーのブレーキングで突然タイヤバースト、ノーズを壁にぶち当ててクラッシュ。場所が場所だけに怖い怖い。アロンソは無事でよかった。
そして十一周目、ホームストレートでラルフが大クラッシュ。グリッド上にパーツをばらまいて中央にマシンが止まった。二度目のセーフティカー、この機に多くのマシンがピットに飛び込むが、BARは動かない。
しかし長いことラルフは動かず、マーシャルも駆けつけない。大丈夫なのか? 心配だ。リプレイ映像を見ると、最終コーナーでインのウォールを擦ってからスピンしながらアウトのウォールに直進。リアから壁に突込んでマシンが大破した。インディアナポリスで起り得る最悪のアクシデント。今年のブリックヤードには魔物が棲みついたか。オンボードカメラでアップになつたマイケルのバイザー越しの表情は如何。事故現場を通る度に気掛りそうにそちらを見る頭の動きが痛ましい。ラルフに意識があることは確認できるが、医療スタッフは安静にさせて搬送しようとしている模様。
十分ほど経つてラルフは救急車で移送された。スタンドの観客は全員起立でこれを見送った、ちょっと感動。
十九周目、どうも様子のおかしかったダ・マッタがコース上にマシンを止めた。二十周目、レース再開。あんな事故のあとだけにおとなしめのリスタートとなった。
トップ三台のタイムはほとんど同じ。マイケル、琢磨、バトンが一秒以内に並んでいる。ホームストレートはすごい迫力だ。二セクで速い琢磨がマイケルを追い回している。二十四周終了時、バトンがピットイン。停止位置で滑ってしまい、危うく事故になるところだったが辛くも無事に済んだ。続いて琢磨もピットイン。バトンの前に復帰したが両者ともほぼ最後尾。琢磨はウェバー、クルサードと料理する。バトンは慎重だ、と思ったら二十八周目に再ピットイン。トラブルによりリタイア。今季初のノーポイントとなった。
三十周目、ライコネンが二度目のピットイン。琢磨はフィジケラ、ハイドフェルトと料理して七番手に浮上。三十一周目、ライコネンがウェバーをオーバーテイク。三十三周目の順位。
琢磨は誰よりも速く前を追う。今一番レースをしているぞ。
三十五周目にライコネンが三度目のピットイン。ニューマチックのエア注入に時間を取られて最後尾へ。同じ周、モントヤが初めてのピットイン。琢磨の後ろ、六番手で復帰。スタート直前のドタバタを考えるとよく持ち直した。チームメイトの事故に助けられたというのが皮肉だ。
三十九周目、トゥルーリが二セクでターニングベーンを落とす映像が。同じ場所でハイドフェルトもパーツを落しているし、縁石が危ないのかもしれない。琢磨、気を付けろよ。その琢磨は同じコーナーでパニスを抜いて四番手に。
四十二周終了時、マイケルが二度目のピットイン。琢磨の前、三番手で復帰。四十五周目ハイドフェルトがリタイア。同じ周、琢磨が二度目のストップ。四十七周目、トゥルーリがピットイン、琢磨の前に復帰。
四十九周目、フィジケラの左リアタイヤがバースト。何とかピットに戻って復帰したが、入賞のチャンスは逃したか。
五十一周目、バリチェッロがピットイン。首位のキープはならず、二番手で復帰した。五十二周目、マイケルの様子がおかしい。インフィールドで全然速さがない。それでも抜きにかかったバリチェッロを威圧するマイケル。この悪さあってこそのマイケルだが、ここで抜けなきゃルビーニョも男じゃないぞ。行け行け。
五十六周目、クルサードが三度目のピットイン。五十八周目、モントヤが二度目のピットイン。六番手でコースに復帰したまさにその時、カーナンバー3に黒旗が掲示され、モントヤの失格が通達された。スタート直前のマシン乗り換えが認められなかったということで、これは仕方のないところ。残念。
六十二周目、ウェバーのマシンがオイルを噴き出してリタイア。オーバルにオイルをまいて、ちょっと怖い。
同じ周、琢磨がトゥルーリをパスして三番手浮上。周回遅れのライコネンが絡んだために両者ともコースオフ気味になり、トゥルーリはスピンしてしまった。琢磨の大胆さは少しも衰えていないぞ。
残り六周、様子のおかしいフィジケラがみるみる失速してピットイン。コースには戻ったものの、これでバウムガルトナーが八番手に浮上。
残り三周。琢磨三番手。もう怖くて画面を見てられない。「うわー」とかやめてくれよ。あと二周。‥‥何か踏んでるし。踏むな。‥‥あと、一周。マイケル優勝。ルビーニョ、二位。三位‥‥佐藤琢磨。おめでとう。
四位トゥルーリ、パニス、ライコネン、クルサード、バウムガルトナーまでが入賞、九位フィジケラまでが完走扱いとなった。
何より今日の琢磨はたぶん一番多くのマシンを抜き去ったドライバーだったはず。残りはまだ九戦もある。楽しみで仕方がない。
2004年第9戦 アメリカGP決勝結果
順位 | ドライバー | チーム | タイヤ | タイム/周回 |
---|---|---|---|---|
1 | M・シューマッハー | フェラーリ | BS | 1:40'29.914 |
2 | R・バリチェッロ | フェラーリ | BS | +0'02.950 |
3 | 佐藤琢磨 | BAR・ホンダ | Mi | +0'22.036 |
4 | J・トゥルーリ | ルノー | Mi | +0'34.544 |
5 | O・パニス | トヨタ | Mi | +0'37.534 |
6 | K・ライコネン | マクラーレン・メルセデス | Mi | +1LAP |
7 | D・クルサード | マクラーレン・メルセデス | Mi | +1LAP |
8 | Z・バウムガルトナー | ミナルディ・コスワース | BS | +3LAPS |
9 | G・フィジケラ | ザウバー・ペトロナス | BS | +8LAPS |
R | M・ウェバー | ジャガー・コスワース | Mi | 60LAPS |
R | J・P・モントヤ | ウィリアムズ・BMW | Mi | 57LAPS |
R | N・ハイドフェルト | ジョーダン・フォード | BS | 43LAPS |
R | J・バトン | BAR・ホンダ | Mi | 26LAPS |
R | C・ダ・マッタ | トヨタ | Mi | 17LAPS |
R | R・シューマッハー | ウィリアムズ・BMW | Mi | 9LAPS |
R | F・アロンソ | ルノー | Mi | 8LAPS |
R | C・クリエン | ジャガー・コスワース | Mi | 0LAP |
R | F・マッサ | ザウバー・ペトロナス | BS | 0LAP |
R | G・パンターノ | ジョーダン・フォード | BS | 0LAP |
R | G・ブルーニ | ミナルディ・コスワース | BS | 0LAP |
■ [GP][2004][USA]総括
いくつかポイントを絞って振り返ってみる。
BAR-琢磨が初の表彰台、バトンはリタイア
チームのミスを琢磨の腕でカバーしたといっていい様な表彰台だった。本人が母国語インタビューで語っていた通りで、やはりあのピットストップ戦術はミスと言っていいだろう。勝てるマシンとドライバーは揃った。あとはチームの問題だ。
バトンに関してはギアボックストラブルということだし、ホンダの抱える問題点はある程度クリアになったとみてよかろう。それにしても、二人がピットアウトした後にバトンが止まるまでのほんの僅かな間に垣間見えた二人のドライビングスタイルの違いが面白かった。とにかく前に行こうとする琢磨、慎重を期すバトン。今回に関していえば、琢磨とバトンの立場だけを入れ替えたら表彰台はなかったはず。先に頂点に立つのがどちらか、贔屓目抜きに見てみたいと思う。
フェラーリ-疑惑のマイケル、勝てないバリチェッロ
マイケルに不審な点が二つ。一回目のローリングスタートでの追越しと、二回目のセーフティーカー導入時の「スーパーラップ」。ピットに入らなかったBAR勢を差し置いてトップにいたのはどういうことか。
The restart of the race saw Michael Schumacher get a better exit from the final turn and he passed Barrichello as the cars crossed the start-finish line to recommence racing.Michael Schumacher wins chaotic US GP
この様に、スタート時の追越しは特に問題とはされていないようだ。CSでは川井氏が「タイミングモニタ上でミハエルが前に出たことははっきりしている」と頻りに主張していた。自分はそれを確認できなかったのだが、どうなのだろう。
もう一つの「スーパーラップ」についてもFIA公式インタビュアーが「あれはどういうこと?」とツッコんでいたが、マイケルは巧妙にはぐらかした返事をしていた。
どちらの件も、レギュレーション上は問題ないことなのかもしれない。しかし、「安全にスタートすること」が名目のローリングスタートでラインを跨ぐ前から事実上の競り合いを演じたり、実の弟の大事故によるフルコースコーションの状態で一台も抜かなかったとはいえ全開走行をしてしまう「えげつなさ」をみると、やはりマイケルはマイケルだなあと思う。
で、こんなことを書いていて何だが、こうでなくちゃマイケルじゃないと私は思っている。いつまでも、勝つことに関して貪欲であってほしい。
で、バリチェッロだ。個人的に期待していたし、実際速かった。全回に続いて今回もマイケルに対してかなり接近し、ドッグファイトを演じてみせた。速さではマイケル以上だったろう。しかしマイケルの示威的なブロックにアクセルを緩め、以降まったく抜く素振りを見せなかった。これでは本当に「演じた」だけかよ、という気にもなってしまう。このまま二番手の位置をキープしてて良いのだろうか。ここはぜひ、'91年のマンセルとパトレーゼが見せたような「ベテラントップランナー同士のどつき漫才」を見せてほしいところだ。
追記
id:skobaさんの日記によると、ピットに入らなかったマシンは事故現場を通過する際に徐行を強いられたため、いち早くピットに入ったマイケルが先行できたのではないかとのこと。なるほど、そういう話なら納得がいくし、インタビューの際にツッコまれたマイケルが何のことか分らない様なコメントをしていたのも頷ける。「スーパーラップ」疑惑については撤回することにしよう。
ウィリアムズ-北米連戦ノーポイント
ラルフのクラッシュは、とにかく本人に大事がなくてよかった。マーシャルがすぐに駆けつけなかったことに関してクルサードが非難のコメントを出しているが、もっともだと思う。それなりに事情はあったのかもしれないけれど。
モントヤは二戦連続で失格の憂き目に。本人の責任ではないが、あんまりな話だ。ポイントランキングでもルノーとBARに随分水を空けられた。このチームは時々何をやっているのかわからなくなるというか、個々の事象はともかくとして全体が変な方向に向うことがある。揺るぎない体制を求めるには、来年を待たなくてはならないのだろうか。
ルノー-トラブル頻発
こちらも北米大陸ではゲンが悪かった。トゥルーリが辛うじて5ポイントを獲得したが、これも予選でタイムなしという危うい状況から何とか掴みとったもの。アロンソのバーストはミシュランの問題か、チームのセッティングの問題か。まあ、たまたま不運が重なっただけだとは思うのでそれほど心配はしていないけど。
マクラーレン-地味に復調
復調と言ってよいのかどうか、とりあえず二戦で四人分のポイントを稼いだのは事実。ちょうどザウバーあたりに期待される程度の活躍をしている印象。できることからこつこつと。
その他もろもろ
ザウバーは直線番長なセッティングで勝負に出たが、インフィールドであれだけ遅いとどうしようもなかった。フィジケラのバーストは異物を踏んだせいだろうか。
クリエン、マッサ、パンターノ、ブルーニ。下位チームのそれぞれ一台がスタート直後のクラッシュで消滅。ジャガーはカナダでもクラッシュしているし、いいところなし。上位グリッドを獲得するのが如何に大切かがよくわかる。そんな中、ひたすら地味に走りぬいてついにポイントを獲得したバウムガルトナーには素直に拍手を送りたい。
未だノーポイントなのはクリエン、パンターノ、ブルーニのルーキートリオのみ。マシン云々はさておいても、今年のルーキーは不作と言ってよいのかもしれない。できれば後半戦で、こんなつまらぬ感想を吹き飛ばしてほしいものだ。
それにしても、これだけやってまだ残り九戦もある。ファンとしては嬉しいけど、ちとゲップが出そうでもあるな。